【和解条項の一部】
1.幼稚園側は、一審判決で認められた法的責任を認めるともに、被災園児らと家族に対し、心から謝罪する
2.幼稚園側は、幼い子供らを預かる幼稚園等の教育機関及び保育所等において、自然災害が発生した際に子供らの生命、安全を守るためには、防災マニュアルの充実及び周知徹底、避難訓練の実施並びに職員の防災意識の向上等、日頃からの防災体制が十分に構築されていなかったことを認める

 和解調書に盛り込まれている「心からの謝罪」が、誰に向かってどのような謝罪をさすのかは、まだ何も決まっていない。

「やっぱり園側が自発的に(家に)来るところからがスタートかな。私は娘に対して謝罪を受けていないと思っているので、娘に対しては心からの謝罪を求めます。どのタイミングでそう思えるかはまだ分からないんですけれども、この問題に幼稚園側をきちんと向き合わせなければいけないと思っています。今は法的に終わらせたに過ぎなくて、たぶん、これからが長いのかなって」

 そう美香さんが言うと、他の3人の母親たちも覚悟するように大きく頷いた。

隠されている真相を明らかにしなければ
今後の教訓にならない

 遺族が震災から間もない時期に提訴に至ったのは、真相究明の手段が裁判以外に残されていなかったからだった。

日和幼稚園訴訟「本当に和解でよいかすごく悩んだ」 <br />遺族が語った葛藤と新たな一歩専門家らが主宰する学習会でも講演をした西城江津子さん、佐々木めぐみさん、佐藤美香さん(左から順に)。慣れないPCでの作業も手探りで取り組む(2014年12月12日、東京都新宿区内)
Photo by Yoriko Kato

 提訴する前、自ら地域で聞き込みを続けて、事故当時の情報や資料を集めた。しかし私立のため、幼稚園内部の情報については収集に限界があった(参考:園児5人を乗せたバスはなぜ津波へ向かったか?日和幼稚園訴訟を生んだ“やるせない怒り”の着地点 ――石巻私立日和幼稚園を訴えた遺族のケース)。

「地震が起きたとき、うちの娘は、地域のみんなが逃げようとしている高台の幼稚園にいた。一番いい場所にいたんです。だから私だって安心してたんです。娘は絶対に大丈夫だって。バスの時刻表を見ても、帰りの便が出る時間でもなかったし。それなのに、親にも内緒で日頃からバスの便を海よりのルートに変更するといういい加減なことをやっていたということがわかって。一番いい場所にいた娘が、なぜ海沿いに行かされたのか。私はその疑問が払拭できない」(美香さん)