この映画のどこが反日だというのか

 ……ここまでの記述は、ネットや雑誌に書かれているストーリーを参考にした。不思議だ。これのどこが反日なのだろう。ネット上で展開する上映中止を求める署名運動のサイト冒頭に掲げられた宣言文を引用する。

 【署名】アンジェリーナ・ジョリーの反日映画「アンブロークン」阻止! 戦争当時、飢餓状態に耐えきれず、死人の肉に手を出す日本兵はいただろう。しかし〈人食いの風習〉で、しかも〈生きたまま人肉を食べた〉という証拠がどこにあるのか!? 日本に〈生きた人間を食む風習〉は無い!! 反日プロパガンダやめろ!!!

更新日:2014年12月23日

 つまり日本兵たちが捕虜の肉を食べるシーンがあるから反日映画との理屈らしい。ならば実際にそのシーンはあるのだろうか。以下は昨年12月15日に更新された産経WEBの記事の引用だ。

 ルイスは実在の人物で、98年の長野冬季五輪の聖火ランナーも務めた。くしくも今月2日に肺炎のため亡くなった。97歳だった。問題なのは、原作に事実とは受け取りがたい記述があること。例えば捕虜の扱いについて「eaten alive in ritual acts of cannibalism」とある。訳すと「人肉食いの風習で生きたまま食べられた」。これを、そのまま映像化されてはたまったものではない。米国では2月のソチ五輪の全米放映時に予告編が流され、日本でも動画投稿サイトで視聴可能だが、それを見る限りルイスが過酷な試練を乗り越える感動巨編という印象で、食人場面はなかったが虐待シーンは確認できた。旧日本軍の軍人をしっかり非人道的に描いているようだ。(以下略)さらに問題視されているのはベストセラー作家、ローラ・ヒレンブランド氏の原作で、「捕虜たちが焼かれたり、人体実験で殺され、(日本の)古来からの人食いの風習で生きたまま食われた」などと捏造(ねつぞう)されたストーリーが史実のように描写されていることだ。

WEB編集チーム 伊藤徳裕

 動画投稿サイトで観た予告編映像を根拠に「食人場面はなかったが虐待シーンは確認できた」と書かれているが、ここがまずはよくわからない。確かに「それを見る限り」と補足はされているが、そもそも予告編など何の根拠にもならない。大事なシーンであればあるほど、普通は予告編には使わない。

 まあそれはともかくとしても、この映画に食人のシーンがないことは確かなようだ。カナダの映画館で『アンブロークン』を観た乗松聡子のレビューが、『週刊金曜日』1月23日号に掲載されている。以下はその一部。

 しかも映画版では、人肉食には何も触れていない。ネットで「日本軍が人肉を食う映画」などと書かれているが、それこそ「事実無根」の中傷である。