乃村工藝社社長 渡辺 勝
撮影:住友一俊

 2007年の秋頃から景気悪化の予兆はあった。当社の主力事業である店舗内装やショールームなどの企画・施工を請け負う商業施設部門では、10億円以上の大型プロジェクトが1~2年延期となったり、予算が縮小したりといった影響が出ていた。しかし、08年夏以降にこれほどまで景気が悪化するとは思っていなかった。

 だが、社内では原点に戻り、棚卸しをするよい機会だと言っている。今までの顧客に対する提案方法やアプローチの仕方が最良のものなのかを見直すチャンスだ。

  創業116年の歴史のなかで付いてしまったムダをきれいにするときだと思っている。さらにこれまで大型プロジェクトを中心に受注してきたが、これからは中小規模のプロジェクトも積極的に取りにいくつもりだ。

 たまたま私は若い頃に社内の多くの部署を経験した。だからわかるのだが、他の部署を経験することが乃村の総合力を知ることにつながる。そのために人事異動も積極的に行なっていく。

 総合力のある人間がどんどん出てくれば、今まで取りこぼしていた需要を拾うことができ、売上高は2割は上がるのではないかと思っている。

 国内事業は当面厳しいだろうが、海外事業には期待している。来期、シンガポールの拠点を本格稼働させる。乃村の強みであるデザイン力と質の高さで勝負していきたい。10年度には海外売上高は全体の5%、さらに今後5年程度で10%程度まで伸ばしていきたい。

(聞き手:『週刊ダイヤモンド』編集部 片田江康男)