一流アスリートのように「自信」がもてれば、自分ももっと力を発揮できるのに…。誰もが一度はそう思ったことがあるのではないでしょうか。しかし、実は、一流アスリートの多くは、「自信なんかない」と言います。にもかかわらず、彼らは周囲からは「自信」があるように見えるし、試合において自分のもてる力を発揮できます。それは、なぜなのか? オリンピック3連覇を成し遂げたレジェンド・野村忠宏さんは、必要なのは「自信ではなく、確信だ」とおっしゃいます。何に対する「確信」なのか? この記事では、それを明らかにします(この記事は、『超☆アスリート思考』(金沢景敏・著)を抜粋したものです)。

本当に「自信」のある人が、ポジティブ思考をしない“深いワケ”写真はイメージです Photo: Adobe Stock

「自信」たっぷりの選手は、
意外と勝てない?

 もっと「自信」がほしい――。
 誰だってそう願っていると思います。

 自信があれば、会議でもっと発言できるのに。自信があれば、希望のプロジェクトに立候補できるのに。自信があれば……、自信があれば……。僕も何度そんなことを思ったかわかりません。そして、自信にあふれるトップアスリートの姿への憧れを深めたものです。

 ところが、TBSでスポーツ番組を担当するようになって、「あれ?」と思うことが増えていきました。

 というのは、試合前に「自信」たっぷりに見える選手が必ずしも勝てるわけではないからです。いや、実際にはむしろ逆で、そういう選手のほうが負けることが多いことに気づいたのです。

 たとえば、格闘技中継の準備のために現場に詰めているときに、それまでの取材で顔見知りになっている僕に近づいてきて、「金沢さん、見ててください! 俺、KOで倒しますから!」などと、気合十分、自信たっぷりに話しかけてくれる選手がいるのですが、実は、そういう選手が意外と勝てない。

 一方、どちらかというと静かな口調で、「勝っても負けても、自分のやってきたことを出すだけです」などと、自分に言い聞かせるように話す選手もいます。一見、自信があるようには見えないのですが、実際には、こういう選手のほうが勝つことが多いのです。それが僕には不思議だったのです。

試合前にビビリまくる
金メダリストの偽らざる「素顔」

 でも、これを不思議と思う感覚は次第に消えていきました。

 トップアスリートの方々と親しくさせていただき、その本音に触れる機会が増えるにつれて、僕のなかで「自信」というもののイメージが大きく変わっていったからです。

 どういうことか? 柔道家・野村忠宏さんに聞いたお話を紹介しながら、ご説明したいと思います。

「試合前は、ビビリの極みくらいビビんねん……」
 そう野村さんはおっしゃいます。

 試合前日には、相手を豪快に投げているシーン、表彰台に立って金メダルをかけてもらうシーン、仲間と一緒に喜びあっているシーン、優勝インタビューで語っているシーンなど、ポジティブなイメージを想起しながら自分を落ち着かせるのですが、ふっと「素」に戻ると、力を発揮することができずに負けたり、無様に投げ飛ばされて負けたり、不可解な判定で負けたりといった、ありとあらゆる負けパターンのイメージが襲いかかってくるというのです。

ライバルはめちゃくちゃ「強そう」に見える

 夜になって、眠ろうと思っても眠れない。

「このまま眠れないと明日の試合に差し支える……」という不安が湧き起こってきて、余計に眠れなくなってしまう。そんなマイナスのループを繰り返しているうちに、「明日、会場が潰れへんかな……そうしたら試合が延期になるのに……」などという思いがよぎることもある。恐怖に支配されて、逃げ出したい一心になっているのです。

 そして翌日――。
 寝不足のまま会場に入ると、どうしたってライバルに目が行きます。

 しかも、やたらとライバルが強そうに見える。「あいつめっちゃ強そうやな……」「あいつ調子よさそうやな……」といった想念が渦巻くなか、試合時間が刻々と迫ってくると、「こんな弱気な自分、集中できていない自分を、畳まで引きずっていったら絶対に負ける。この自分と決別せなあかん」という思いが強烈に湧き起こってくるそうです。

試合前、トイレで行う「秘密のルーティン」とは?

 そこで、野村さんのルーティンが始まります。