毎週月曜日の「日本経済新聞」の「景気指標」欄は、切り取って常に手元に置いておくと、内外の主なマクロ指標を確認できてビジネスマンには便利だ。この一覧表と一緒に載っているコラムが時々おもしろいのだが、1月26日の「消えたミセス・ワタナベ」が特におもしろかった。

 「ミセス・ワタナベ」とは主婦層をイメージした日本のFX(外国為替証拠金取引)に参加する個人を指す言葉だが、コラムは、昨年11月に急減しているようだと指摘し、さらに12月に全国のパチンコ台の数が増えていることを紹介して、「ワタナベさんは、パチンコ店に移動した」のではないかと推測している(「特定できない」と断っているが)。

  そして、ミセス・ワタナベがFX市場に帰って来ないと、円高は止まらない、という大手邦銀の為替担当者の言葉を紹介し、彼ら(彼女ら?)の動きが輸出企業の浮沈の鍵を握るかもしれないと結ばれている。

 個人のFXトレーダーとパチンコ店の客は確かによく似ている。

 パチンコは、客同士がパチンコ店を通じて、手数料のかかるゼロサム・ゲームを戦う構図だが、外国為替市場も基本的な構造はゼロサム・ゲームだ。

 また、コラムの論旨は、ミセス・ワタナベが外貨のロング(買い持ち)ポジションを持つことを当然視している。事実、個人の取引では圧倒的に外貨のロングが多い。これまで外貨のほうが高金利だったのでロングポジションを持つとスワップポイントがもらえたし、「空売り」に抵抗を感じる人が多いこと、などが理由だろう。