仮に父親が子どもを引き取った場合、離婚前まで専業主婦だった妻が離婚後に安定して収入を得ることは難しいので、親権者である父親に対して養育費を支払えるかどうかと言えば、やはり難しいと言わざるを得ません。対して母親が親権を持った場合は、父親が定職についていればある程度の収入があり、養育費を支払うことが可能なので、やはり母親が親権を持つ方がいい場合が多いと思われます。このように、養育費の有無が父親が親権を持った場合、母親が持った場合の違いとなります。

 さらに、離婚前まで子育ての大半を母親が担ってきたのなら、父親の育児経験は乏しく、休日に子どもの面倒をみるのも一苦労です。このような事情が「8割は母親」という統計値に反映されているのです。

 とはいえ、子どもがもう少し大きくなったら、話は違うのではないか――。あなたはそう思うかもしれません。たとえば、子どもが1人で留守番できれば、保育料の負担を心配する必要はありませんし、休日も友達と遊んだり、部活に参加したり、塾に通ったりすれば、父親が必要以上に面倒をみる必要もなくなるはずです。

 確かにその通りですが、子どもがある程度の年齢に達すれば、親権を決めるにあたり、「父親と母親のどちらが適任か」ではなく、「子どもが父親と母親のどちらと暮らすことを望んでいるか」という子どもの気持ちが優先されます。残念ながら、父親が会社員、母親が専業主婦という家庭において、子どもはほとんどの時間を母親と一緒に過ごしているので、やはり母親を選ぶことが圧倒的に多いのです。

離婚交渉前に親権を諦めてしまう?
母親が子どもを連れて別居することも

 ちなみに、完全に丸裸の状態で右も左もわからないような人が、私のところに相談しに来るケースは非常に稀です。実際には自分でネット、書籍、役所の無料相談などを通してある程度の知識を得ており、「その続き」から相談が始まることの方が多いです。少し調べれば、前述の「親権の8割は母親」という話に行き当たるほど、これはかなり有名な数字です。

 だから、夫婦間で離婚の話し合いを始める前の段階で、すでに父親は親権を諦めていて、「子どもを引き取りたい」という一言すら発しないケースも珍しくありません。そのような場合は、始めから「親権は母親」という前提で、いきなり養育費の話を切り出されます。そうした風潮も、「親権は母親」という傾向に拍車をかける一因になっています。

 夫婦が同じ屋根の下で暮らしながら、お互い話すことは「離婚のこと」だけ。これは滑稽な光景だと思いませんか。たとえば、妻は近々離婚する夫のために食事をつくったり、夫の下着を洗ったり、夫の部屋に掃除機をかけるのですが、少し想像しただけでも気分が悪くなるでしょう。