「あれも大事、これも大事」と悩むのではなく、「何が本質なのか?」を考え抜く。そして、本当に大切な1%に100%集中する。シンプルに考えなければ、何も成し遂げることはできない――。LINE(株)CEO退任後、ゼロから新事業「C CHANNEL」を立ち上げた森川亮氏は、何を考え、何をしてきたのか?本連載では、待望の初著作『シンプルに考える』(ダイヤモンド社)から、森川氏の仕事術のエッセンスをご紹介します。
大企業で培った「やり方」は、ベンチャーでは役に立たなかった
「予算が少ないから、結果を出すことができない」
このような言い訳をする人で、仕事ができる人はいません。潤沢な予算を用意しても、彼らに結果を出すことはできない。僕はそう確信しています。
もちろん、ビジネスをするうえでは、ヒト・モノ・カネなどのリソースが欠かせません。そして、現場の社員たちに必要なリソースを用意するのは経営の責任です。しかし、常に必要なリソースのすべてを用意することができるなどということはあり得ません。リソースはいつも足りない。それが、ビジネスの現実なのです。
大切なのは、そのなかでいかに知恵を絞って結果を出すか。その試行錯誤のなかでこそ、本物の仕事力は鍛えられます。むしろ、リソースに恵まれた環境よりも、「何もない」くらいの環境のほうが、自分を成長させることができるのです。
それを実感したのは、ハンゲーム・ジャパン株式会社に入社してからのことです。
幸か不幸か、僕は大企業でキャリアを始めました。そのなかにいると、なかなか自覚できないのですが、大企業には実に豊富なリソースがあります。そのため、仕事が非常にやりやすい。たとえばマーケティング。日本テレビにいたころは、プレスリリースを出すだけで多くのメディアが取り上げてくれました。当時は予算も豊富にありましたから、広告枠も簡単に押さえることができました。
ところが、僕が入社した当時のハンゲーム・ジャパン株式会社では、そういうわけにはいきません。マーケティングを強化したいと思ったのですが、無名の会社でしたから、プレスリリースを出してもほとんど相手にされません。もちろん、広告を出せるような予算もありません。それまでに培った僕のやり方は、ほとんど役に立たなかったのです。