水谷社長(右)は、ザ・モルツで利益を生み出すことができるのか
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 ビールの国内市場で生き残りを懸けたサバイバルゲームが、さらに激しさを増しそうだ。

 サントリービールは、9月8日より、ビールの新商品「ザ・モルツ」を発売すると発表。水谷徹社長は記者会見の席で「将来的には、業界で定番と認知される1000万ケースの出荷数量を目指す」と目標を掲げた。

 ザ・モルツの価格は220円程度(350ミリリットル缶)で、アサヒビールの「スーパードライ」やキリンビールの「一番搾り」などが競合商品となる。

 サントリーはこれまで、矢沢永吉らのCMでおなじみの「ザ・プレミアム・モルツ」を旗艦ブランドに位置付け、ビール類市場でのシェアを伸ばしてきた。

 しかし、ザ・プレミアム・モルツはプレミアムとうたうだけあって、260円程度(同)と高価。故に、「それだけでは2020年にビール類市場でシェア20%という目標の達成は難しい」(水谷社長)と考え、新商品を投入したのだ。

 加えて、酒税法の改正もザ・モルツ発売の背中を押す。

 水谷社長は、「酒税法の改正はまだ決まっていない。今回の新商品とは関係ない」と言うが、財務省が酒税を将来的に一本化する方向で検討を進めているのは、業界では周知の事実。

 このまま財務省の思惑通りにいけば、ビール、発泡酒、第三のビールといった区分がなくなり、価格差が縮小するため、ビールにとっては追い風となる。

 将来の酒税の一本化を見越してあらかじめ手を打とう、というサントリーの戦略が、ザ・モルツの発売から透けて見える。