「極ゼロ」酒税戦争で<br />国税庁に楯突いたサッポロの代償極ゼロの再発売会見での尾賀真城・サッポロビール社長。今年は酒税法の改正議論も控え、国税庁と財務省に振り回される年となりそうだ
Photo by Hidekazu Izumi

 4月28日、サッポロホールディングス(HD)の元に一通の通知書が届いた。送り主は国税庁。書面にはむなしくも、サッポロが国税庁に返還を求めていた追加納税115億円を「返さない」旨が記されていた。

 サッポロは、昨年6月、ビール系飲料「極ZERO(ゼロ)」が、第三のビールと認められない可能性があるとして、酒税を国税庁に自主納付した。しかし、その後の社内調査で、第三のビールである確証を得たとみえて、今年1月、国税庁に、納付した酒税の返還を要求。今回の国税庁の通知は、この要求に対する回答であった。

 そもそも、この極ゼロ問題の争点とは何だったのか。国税庁やサッポロ関係者など、当事者たちの証言から真相が明らかになった。

 第三のビールには製法が2種類ある。一つ目は、大豆やエンドウなど、麦芽以外の穀物類を発酵させて造るもの。

 二つ目が極ゼロと同じ製法で、発泡酒にスピリッツ(蒸留酒)を加える、というものだ。ここでいう発泡酒とは、麦芽およびホップを原料の一部として「発酵」させていなければならない。

 両者のバトルの根源は、この「発酵」をめぐる見解の相違にあったようだ。国税庁は、「極ゼロは発酵が不十分な段階でスピリッツを加えているため、第三のビールとはいえない」と指摘し、サッポロは「発酵が不十分だと言うならば、どんな根拠で発酵と判断できるのか」と牙をむいたのである。