4月末の米議会演説で戦略的勝利をおさめたのもつかの間。安保関連法案に関する強硬姿勢でそっぽを向く国民が増え、安倍総理は窮地に陥っている。わずか数ヵ月のあいだに、安倍内閣が犯した間違いについて、解説する。

 安倍内閣の支持率が急落している。朝日新聞が6月20、21日に実施した世論調査によると、内閣支持率は1ヵ月で6ポイント低下し、39%になった。7月4、5日に実施した毎日新聞の調査では、不支持が支持を上回り、第2次安部内閣発足後、初めて逆転した。

米議会での”希望の同盟演説”で大勝利を収めたのもつかの間。安倍総理は再び、窮地に陥っている 
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 支持率が下がっている理由は、「安保関連法案問題」である。直接的な理由は、衆院憲法審査会で憲法学者3人が、安保関連法を「憲法違反」と指摘し、政府がそれを事実上「無視」していること。また、自民党若手議員の勉強会で、法案に批判的なマスコミへの圧力を支持する発言が相次いだことなどだろう。しかし、この問題は、長期的視点で見ると、もっと根が深い。

過去数年の劣勢を一気に逆転
安倍演説で「戦略的勝利」をした4月

「私たちの同盟を、『希望の同盟』と呼びましょう。米国と日本、力を合わせ、世界をもっとはるかに良い場所にしていこうではありませんか。希望の同盟。一緒でなら、きっとできます」

 4月29日、安倍総理は絶頂にあった。米議会における「希望の同盟」演説は大成功。オバマ大統領は、ホワイトハウスのツイッターに「歴史的な訪問に感謝する。日米関係がこれほど強固だったことはない」と書き込んだ。

 しかし、ここに来るまでの道は、平坦ではなかった。2012年12月に第2次安倍内閣が誕生した時、日中関係はすでに、「尖閣国有化問題」(12年9月)で「最悪」になっていた。

 12年11月、中国は、モスクワで仰天の「対日戦略」を提案している。その骨子は、①中国、ロシア、韓国で「反日統一共同戦線」をつくる ②日本の北方4島、竹島、沖縄の領土要求を退ける(つまり、沖縄は中国領) ③米国を「反日統一共同戦線」に引き入れる――である(中国、対日戦略の詳細はこちらの記事を参照)。

 この戦略に沿って中韓は、全世界で「反日プロパガンダ」を展開し、大きな成果をあげた。13年12月26日、安倍総理が米国のバイデン副大統領の「警告」を無視して靖国を参拝すると、世界的「日本バッシング」が起こる。

 中韓に加え、米国、英国、EU、ロシア、オーストラリア、台湾、シンガポールなどが、靖国参拝を非難した。この時、安倍総理は「右翼」「軍国主義者」「歴史修正主義者」とレッテルを貼られ、世界的に孤立した。

 しかし、14年3月、ロシアがクリミアを併合すると、日米関係は好転する。「対ロシア制裁」に、日本の協力が必要だからだ。そして15年3月、今度は「AIIB事件」が起こった。英国、ドイツ、フランス、イタリア、オーストラリア、イスラエル、韓国などが、続々と米国を裏切り、中国主導のAIIBに参加していく。