逆上がりができない、ドッジボールで狙われてばかり…不器用すぎる少年の思い出に胸がギュッとなる【マンガ】『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社

児童精神科医による大ヒット書籍のコミカライズ版として、くらげバンチ(新潮社)で連載されている(原作/宮口幸治、漫画/鈴木マサカズ)。今回は、第18話『牛丼の味』から、原作の立命館大学教授で児童精神科医の宮口幸治氏が漫画に描けなかったエピソードを紹介する。

不器用すぎる少年が取り組む「認知作業トレーニング」

 発達性協調運動症と診断され身体的な不器用さを抱える非行少年・太田太志(仮名)は、少年院で不器用さを少しでも改善するためのトレーニングを受けています。

 身体面への支援は、専門職である作業療法士が中心となって行うこともあります。著者が勤務していた少年院でも、外部から定期的に作業療法士を招き、プログラムを共同で開発してきました。

 今回のストーリーでは、大学から来てもらった作業療法士が「認知作業トレーニング(Cognitive Occupational Training:以下COGOT)」というプログラムを、不器用な少年たちに実施します。

 COGOTの特徴は、指導者が一方的にやり方を教える従来の方法とは異なり、対象者の「認知」にも働きかける点にあります。単に体を動かすのではなく、「この運動の目的は何か」「うまくやるにはどうすればよいか」「失敗した原因はどこか」といったことを、本人が考えられるよう支援します。つまり、身体の動きと同時に“考える力”も育てるプログラムなのです。

 プログラムは、自分の身体、物と自分の身体、人の身体と自分の身体の3つに分け、7つのモジュールで構成されています。各モジュールにはさらに複数の課題があり、全部で20のトレーニングがあります。

<自分の身体>
(1)身体を知る
(2)力加減を知る
(3)動きを変える

<物と自分の身体>
(4)物をコントロールする
(5)指先を使う

<人の身体と自分の身体>
(6)動きを真似る
(7)動きを言葉で伝える

 今回のマンガでは、(1)身体を知ると(4)物をコントロールするを取り上げています。

(1)に含まれる「バランス運動」では、片足立ちを行います。ただ立つだけではなく、指示に従って腕を動かしながら姿勢を保つことで、バランス感覚を養います。このとき、視線をどこに向けるかが重要なポイントになります。

(4)物をコントロールするでは、「棒の受け渡し」や「2人キャッチ棒」といった課題があります。「棒の受け渡し」は、2人が背中合わせに立ち、後ろを見ずに手に持った新聞紙製の棒を相手に渡す練習です。「2人キャッチ棒」は、向かい合って棒を投げ合い、連続して受け取る練習をします。

 一見すると簡単そうに見える課題ですが、実際にやってみると意外に難しく、身体的な不器用さがない人でも一度ではうまくできません。こうしたトレーニングを繰り返すことで、身体の使い方とそれを調整する認知機能の両方を少しずつ改善していくのです。

 原作者である宮口幸治は、児童精神科医として、実際に医療少年院の勤務歴があります。その経験から書いた『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)をマンガ化した作品。マンガの続きは「ケーキの切れない非行少年たち」でチェック!

『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社
『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社