変質を感じたのはAKB48の『僕たちは戦わない』が最初だった。とある日の深夜、テレビを見ながらソファで読書をしていて寝落ちした。少し経ってふと目覚めたのだが、ちょうどそのときテレビ画面に映っていたのが『僕たちは戦わない』のPVで、寝起きに不意を突かれたこともあって最初は誰の曲か分からなかった。ただ、安保法案を巡る議論が白熱しているこの時期にこんな内容の歌を歌うアイドルグループって「制服向上委員会か?」と思ったのだが、それがAKB48だと気づいて意外だったのだ。

 ファンからすれば、変質に気づくのが「おせーよ!」となるのかもしれないが、とにかく僕はこの曲をきっかけに、秋元康という人はAKBグループを何か変質させようとしているのかなと感じたわけだが、そう感じた矢先のSKE48の『前のめり』である。もしかしたら秋元康は、従来より一段高いところでの女子の共感を得ようとしているのか、と感じた次第である。

 話を少し戻すが、前のめりという言葉に関する僕の「身の回り半径5メートル」マーケティングの調査結果によれば、この言葉に対する印象は、ネガティブ派とポジティブ派にハッキリと分かれる。

 ネガティブ派がこの言葉から受ける印象は「地に足がつかない、先走った感じ」というもの。実は、世のなかには「前のめり女」という言葉もあり、これは「ゴマブッ子」という女子に人気の恋愛相談ブロガーというか著作も何冊かある人物が5年くらい前から使っているようだ。この「前のめり女」というのは、とにかく恋愛に先走る女という意味で、もちろんあまりいい意味では使っていない。前のめりという言葉にネガティブな印象を持つ女子がいるのは、このゴマブッ子氏の影響もあるかもしれない。

*注:「制服向上委員会」は政治的活動にも熱心なことで知られるアイドルグループのこと。

自分探しの時代から、
前のめりの時代へ

 その一方で、前のめりという言葉を「非常に前向き」「アグレッシブに生きてる」というポジティブな意味で使っている人たちもいる。SKE48の『前のめり』ももちろんポジティブな意味で使われている。なにしろ「前のめりは素敵だ」「前のめりに生きよう」と歌っているくらいだから。

 ともあれ、時代感覚に優れた秋元康が、このタイミングでそのものズバリ、ストレートに『前のめり』というタイトルの曲をぶつけてきたことには、大きな意味があると僕は感じている。要するに、時代はようやく「自分探しの時代」をようやく(完全に)終わらせて、「前のめり(前向き)な時代」に向かいつつあるのではないか、ということだ。