業界史上最年少での上場を記録したベンチャー企業の経営破綻、そして起業家としての再生を描いた『30歳で400億円の負債を抱えた僕が、もう一度、起業を決意した理由』の著者である起業家・杉本宏之氏が、本書の中にも登場する経営者たちと語り合う。第3回は、杉本氏を公私に渡って支え続け、再起を期した新会社設立の出資者ともなった恩人、楽天イーグルス社長の立花陽三氏が登場。(構成・寄本好則 写真・寺川真嗣)
経済について勉強したのは
破綻の大きな教訓だった。
編集部 今日はわざわざお越しいただいてありがとうございます。さて、立花さんは本書の中でも重要なポイントで登場するキーパーソンになっています。『30歳で400億〜』を読んでみて、印象に残ったところはありますか?
立花 杉本君が再起するために設立した会社には私も出資して、当時はかなり長い時間を一緒に過ごした印象があります。だから、この本に書かれているエピソードの多くも、すぐそばで見ていたんですよね。まずは、ここまでよく正直に書いたなあと驚いています。
杉本 ありがとうございます。もちろん、すべてを本に書けるものではないですけど、できるだけ正直な気持ちを書きました。
立花 あと、経済について猛勉強した経緯も、この本で知りました。先日、仙台で経済セミナーのようなトークショーがあって、杉本君から誘いを受けて、私もいっしょに出演させていただいたのですが、壇上で話していると経済にすごく詳しくなっていて驚いた。本を読んで、なるほどそういうことだったのかと合点がいきました。
杉本 会場の観衆がいる面前だったのに、「何? お前経済の勉強したのか?」って驚いてましたよね。
立花 本当にびっくりしたんだよ(笑)。
杉本 エスグラントが経営破綻する前から、陽三さんには「もっと勉強しろ」とよく指摘されました。
立花 それにしても、この本を読んで改めて、経営者には「景気観」というか、世の中の流れに敏感であることがとても重要だと痛感した。あの当時、リーマンショックが起きて、瞬く間に金融機関がお金を貸さなくなってしまったでしょ。不動産は価格の大きな物件を取引することもあって、つい目先の仕事に追われがちなんだろうけど、マクロの景気観を見失っちゃいけないね。
杉本 そうですね。本当にそう思います。
立花 さらには、銀行員がどんな風に融資の稟議を上げているかとか、融資の相談で銀行員と対峙する時、経営者としてどんな服装や態度で臨むべきなのかといったことも学ぶべきだね。破綻する前、杉本君は結構派手なスーツ着てたりしたからなあ。細かいことだけど、稟議を上げる時にこんな風に説明するんだろうなというところを理解して、そのための情報を提供してあげたりすることが、銀行担当者との信頼関係を築くためには大切だったりする。
杉本 はい。今は、派手になりすぎないように心掛けてます(笑)。そういう面を含めて、金融マンとしてシビアに現実を見ている陽三さんからのアドバイスは的確でした。陽三さんが人一倍勉強しておられることも、そばで見ていて痛烈にわかりましたし。経済について本気で勉強できたのは、破綻を経験したことの大きな教訓だったと感じています。