
米OpenAIと米エヌビディアを中心としたAI投資合戦が過熱している。この数年間でビッグテック企業がAIに投資を表明した金額は総額5200億ドル、日本円で80兆円にも届こうとしている。来るべきエージェントAI時代を制する企業はどこか。特集『DX2025 エージェントAIが来る』(全21回)の#11では、各社の強さとアキレス腱を徹底比較した。これまで「1強」とされてきたOpenAIは覇権を守れるのか?(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
日本全体の原発よりも多い電力を要するAIデータセンターに
国家予算規模の5000億ドル超を投じるOpenAIは今後も安泰なのか
2025年から、米ビッグテック各社のAIを巡るカネの流量が激増している。その中心地にいるのは米OpenAIだ。
25年1月、OpenAIはホワイトハウスでの記者会見で、米オラクルおよびソフトバンクグループ(SBG)との合弁会社スターゲートの設立を発表した。最大5000億ドル(約75兆円)を投じ、OpenAIの開発を支援する新たなデータセンターを米国内に建設する計画。SBGは24年度の同社の連結売上高とほぼ同額の最大400億ドル(約6兆円)をこのプロジェクトに出資する予定だという。
OpenAIは7月にはオラクルと米国内で4.5GWのデータセンター能力を追加開発すると合意。契約金額は5年で3000億ドル(約45兆円)ともされている。さらに9月、今度は米エヌビディアがOpenAIに最大1000億ドル(約15兆円)を段階的出資することで10GW以上のAIデータセンターを整備する提携を結んだ。そして翌10月にはOpenAIはエヌビディアのライバルである米AMDと共同で、6GWのAMDのGPUをデータセンターに導入すると発表した。
これまでに発表されたAIデータセンターの整備計画の容量を合計すると約20GW。これは現在日本全体で稼働している原子力発電所より多い、原発20基分の電力が必要になる規模だ。投資される資金は日本の国家予算の3分の2程度にも相当する巨額に上る。AI投資合戦は未曽有の狂乱状態に達している。
22年末のChatGPT登場からそのブームの中心に居続けるOpenAI。同社は今後も「1強」であり続けるのだろうか。それとも、他社に覇権が移る日は来るのだろうか。そして、エージェントAI時代に企業がパートナーにするには、どこが有力なのか。次ページでは、世界のAIのカネと資源の流れと、ビッグテック各社のAI事業の実力の両方が分かる大図解を、主要陣営全社への取材を交えながら詳しく解説していこう。