筆者の家から北東の方角に、家具専門店のニトリがある。不況下でも業績好調な企業として、新聞や経済雑誌などでしばしば取り上げられる企業だ。まさか、こんな近くに店舗があるとは思わなかった。
顧問先企業の実地棚卸を手伝っているとき、倉庫にあるスチール製の棚の構造に感心して、倉庫担当者に「これは業務用ですか?」と訊(き)いたところ、ニトリで買ったものだと言われた。そこで帰宅後、ニトリの店舗をインターネットで検索したら、近くにあったという次第だ。
休日を利用してニトリを訪ね、店内に足を踏み入れた途端、「ああ、なるほど」と頷(うなず)くものがあった。この店は売りかたを知っているなと。
不況だからといって、値引きやポイントを連発すれば売れるというものでもないし、PB(プライベート・ブランド)商品を棚に並べれば売れるというものでもない。
消費者が店に入ってきたら、彼ら(彼女ら)の購買意欲をかきたてるための仕組み作りを用意しておくことも、店側が備えおくべき「売りかた」の基本だろう。
ニトリ商品陳列に表れる
「売れるシステムづくり」の秘訣
ニトリを訪れたとき、店内の商品棚は、効率性を重視して碁盤の目で整然と配列されていた。ところが、よくよく観察してみると、買い物客は「統計学上のルール」で行動することを、店の側ではあらかじめ想定しているんだな、ということに気が付く。
ニトリが本当に、統計学のルールに沿って商品陳列を行なっているかどうかまでは、筆者は知らない。ただ、店内の商品配列の仕方に、統計学の考えかたが染みこんでいるのは確かだろう、と推測したまでだ。
流通業界の某上場企業では、幹部社員への研修で必ず統計学を学ばせるという。個々の消費者の行動はバラバラであっても、多数の消費者が来店すれば、彼ら(彼女ら)の行動は「正規分布」することを学ばせるのだ。世に数多く考案されている「売れるシステムづくり」の一手法である。