6月末、政府は財政健全化計画の柱となる「経済財政運営と改革の基本方針2015」(骨太方針)を閣議決定した。策定の過程で財政再建の手法をめぐり政府内外で激しい議論が繰り広げられたが、「経済再生なくして財政健全化なし」という副題の通り、最終的には経済成長を重視した内容となった。
7月25日には2016年度予算で各省庁が要求する際のルールとなる「概算要求基準」が閣議了解された。この予算編成を含め、政府は今後「骨太方針」に基づき財政健全化の具体策を詰めていくことになる。だが、BNPパリバ証券の河野龍太郎経済調査本部長は、政府の計画は問題だらけであり、高い確率で失敗すると指摘する。(まとめ/ダイヤモンド・オンライン 河野拓郎)
高い経済成長を前提にするのは
失敗の「典型ケース」
政府の財政健全化計画に関して、論点は大きく3つあります。
BNPパリバ証券経済調査本部長、チーフエコノミスト。1964年生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。住友銀行、大和投資顧問、第一生命経済研究所を経て2000年より現職。多数の政府諮問会議、審議会などの委員を歴任。Photo:Masato Kato
第一に、最も大きな問題として、高い成長を前提としていることです。アベノミクスが成功し、実質成長率2%、名目成長率3%が達成されることを前提にしていますが、これがやはりいちばん大きな誤りです。
各国の財政健全化の成功例や失敗例を振り返ると、これは失敗の典型ケースです。今回の財政健全化計画は、かなりの確率で失敗に終わるでしょう。当たり前のことですが、高い成長を前提にすると、それに伴って税収が増えてくるという見積もりになります。そうすると、本来必要な増税や歳出削減が、必要なくなってしまう。しかし実際には成長率は簡単には高まりませんから、失敗する。
どの国でも同じで、財政問題に直面している国は低成長だからこそ、その問題を抱えている。従って、経済政策当局は、財政健全化と同時に成長率を引き上げるという目標を与えられるのですが、この2つの目標はやはり別々にしなければいけない。