ゲーム業界はいま不況にあえいでいる。強力なハードメーカーがソフトメーカーを守る護送船団方式も崩壊。その中で新興勢力「福岡」のあり方は、ソフトメーカーの将来に多くの示唆を与えてくれる
(文/ジャーナリスト・石島照代)。

  昨年末にゲーム業界をじわじわと覆い続けた暗雲は、今年2月激震となって業界を襲った。

あのSCEが実質的な解体
ひとつの時代が終わった

 その第1弾が、業界大手バンダイナムコゲームスの利益下方修正発表。200人におよぶリストラ特損の計上で、持ち株会社であるバンダイナムコホールディングスが、10年3月期の当期利益予想を85億円の黒字から310億円の赤字に修正した。同時に、ゲームスの鵜之澤伸社長が4月1日に副社長降格になる人事も発表されるなど、”和をもって尊しと為す”企業文化がモットーのバンダイナムコらしからぬ状況に業界中が震撼させられた 。

 第2弾は、ソニー。「プレイステーション(PS)シリーズ」を擁する子会社、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の実質上の解体だ。

 親会社のソニーはSCEをまず「SNEプラットフォーム」という名称に変更、ゲーム機やソフトの開発、販売部門を新SCEに引き継いだ後、残ったネットワーク部門を吸収合併するという。

 この残ったネットワーク部門は、ハワード・ストリンガー会長が目指していたコンテンツビジネスを担う。たとえば、同社のテレビ「3D対応ブラビア」や「PS3」などの端末を使った、「ソニーオンラインサービス」を展開する予定だという。

 実は今回の目的については、業界関係者の間でも判断が分かれており、「事実上の会社整理」、「会計上のテクニックの問題」という声もある。だが、プレイステーション3以降の累積赤字について、関係者は「東芝に売却したセル工場の売却損を含めて、9000億円にも達していると聞いている」と話している。「もはやこれ以上、親会社もSCEを放置できなかったのでは。今後は状況によっては解散も選択肢に入っているでしょう」というのが大勢だ。

 SCEといえば、”ソニー”グループの一員でありながら、「反ソニー」精神を掲げてきたことで知られている。その旗手が、”プレイステーションの父”として知られる、久夛良木(くたらぎ)健同社名誉会長だった。

 PS2が発売された2000年、不振にあえぐ本社の方針によって、SCEはソニーの完全子会社となったが、その時の久夛良木氏の「アルツハイマーの親(本社)を子(SCE)が面倒見ることになりました」という台詞(せりふ)が象徴的だった。当時を知るソニー関係者はこのSCEの顛末について複雑な思いでいるに違いない。

 だが、昨年秋には久夛良木氏自身をのぞいて、社内では久夛良木色も一掃された。現在は親会社の副社長でもある平井一夫氏が、SCE社長も兼任する完全な平井体制であり、今回のSCEの出来事は、ひとつの時代が終わったことを告げているのかもしれない。