保育士と園児写真はイメージです Photo:PIXTA

子どもの様子が手書きされた連絡帳は、保護者にとっては温かみを感じるものでしょう。一方で、子どもに向けるはずだった時間が失われているのも事実。なぜ今、「子どもの保育」と「大人のための手間」のバランスが崩れつつあるのか。保育に長年携わってきた経験から解説します。(社会福祉法人 みなみ福祉会理事長 近藤敏矢)

「大事にされている気がする」サービスは
本当に子どものためになっているか

 保育の理念は、子どもの成長と発達を支えることです。一方で、実際に保育園と契約をするのは保護者です。この構造と時代の変化によって、理念と現実の「ズレ」が生まれています。

 私たちは、自分のために手間をかけてもらうと、満足感が高まりやすいものです。レストランでシェフが挨拶に来てくれると、特別扱いされている感じがして嬉しい。広告の郵便で、あえて宛名だけ手書きにして送ってくるのは、「あなたのために時間をかけました」と感じさせる狙いがあります。

 保育園でも、保護者向けのサービスに時間や手間暇をかけるほど、保護者は「大事にされている」という印象が強くなるでしょう。では、それはそのまま「保育の質」の向上につながっているでしょうか?

 前編でも伝えましたが、口頭であれば1人あたり1分程度で済む連絡が、ICTだと入力や確認で数分ほど、手書きの連絡帳になると1人10分ほどかかると言われています。4歳児以上の国の配置基準では、子ども30人に対して保育士1人です。連絡帳を書くのに1人当たり10分かかるとすると、10分×30人で300分、つまり計5時間にもなります。

 保護者向けのサービスが増えるほど、その裏で子どもの時間が削られていく。そこに、見過ごせない矛盾があります。

 保育士の時間を奪う「大人の業務」は、連絡帳だけではありません。行政からの調査や、法改正に伴う書類作成も年々増えています。