ポール・クルーグマン氏 Photo:Horacio Villalobos/gettyimages
中東情勢を受けて円安が進み、一時1ドル159円を付けた。なぜ円の力が弱くなっているのか。円の価値は戻るのか? 世界で最も影響力のある経済学者のひとり、ポール・クルーグマン氏を緊急インタビュー。米国経済の見通しや、日本企業が円安や原油高、レアアース問題に打ち勝つ方法について聞いた。(国際ジャーナリスト 大野和基)
トランプの真の狙いは?
円の価値は戻るのか
――トランプ米大統領がイランを攻撃した真の狙いは何でしょうか?
トランプ氏のイラン攻撃は、核放棄や体制転換を促すため、あるいは石油利権を握りたいといった地政学的な狙いが明確にあるかというと、私にはそうは見えません。そもそも彼の外交政策には、一貫した長期戦略がないのです。国内政治や金融マーケットの反応を強く意識した、即興的な意思決定が多いからです。
そのためイラン政策についても、戦略目標よりは株式市場の動きや支持者へのアピール、強い指導者としてのイメージづくりといった要因が大きく影響していると思います。また、現在の米国はエネルギー大国であり、石油利権のために戦争するにはコスパが悪すぎます。つまり、市場や世論の反応を見ながら進められる政治的判断の側面が強いのです。
イラン攻撃直後は原油価格が急騰し株価が下落しましたが、トランプ氏が「戦争はほぼ終わりだ」と発言すると、S&P500は上昇し、原油価格も下落しました。しかしその後、戦争が続く可能性に言及すると市場は再び不安定に。まさに大統領の発言が、市場を動かしています。
ただし株価の上昇は、必ずしも国民生活の改善を意味しません。医療費、住宅費、食料価格など生活コストの問題は、株価が上がっても解決されません。さらに、相互関税や原油高がインフレ圧力を高め、住宅ローン金利の高止まりにもつながります。
現在の経済成長は、AI投資や生産性向上、テック企業の利益による側面が大きく、減税や規制緩和の効果は限定的です。すでに、AIバブルへの懸念やイラン戦争の影響で、市場は不安定になっています。現在の米国民の最大の関心は、株価ではなく生活費の高さであることを忘れてはいけません。
――米国と日本の課題は似ていますね。一方で、近年の日本経済の重大な課題が「円安」です。円の力が弱くなっています。なぜ円に対する信認は低下し続けているのでしょうか。円の価値は戻るでしょうか。







