このような欧州の変動は、EU統合の深まりがもたらした構造的問題をはらんでいるように思える。筆者がごく最近訪れた英国およびスウェーデンは双方ともEUのメンバーであるが、ユーロには加入しておらず、地理的にも、どちらかと言うと欧州の外延とも言うべき国である。しかし、これらの国々から欧州の抱える問題を眺めてみるのも欧州の問題を理解する上で有用だろうと思う。

右翼政党と急進左派が躍進の英国
EU離脱、スコットランド独立の議論にも影響

 英国では、やはり反EUを掲げる右翼政党英国独立党が本年の総選挙で12%を超える得票率を得たほか、最大野党の労働党の党首選挙では急進左派のジェレミー・コービン氏が反緊縮財政を掲げ圧勝した。ブレア首相時代から労働党の基調となった、自由主義経済と高福祉政策の両立をめざす穏健主義「第三の道」からの路線転換が必至となっている。労働党の親EUの考え方も変わるのではないかと言う見方もある。

 保守党のキャメロン首相が公約したEUから離脱するか否かの国民投票は、仏、独で選挙が行われる2017年を避け、2016年中に行われるであろうと予想されている。保守党内のEU懐疑派は、所詮EUから得ているのは経済的利益であり、今日の欧州内の相互依存性の深さからすれば、英国がEUから離脱してもさほど大きな経済的損失を被ることはないと主張する。

 一方、産業界の多くを含めEUに留まるべきとする議論では、経済的損失はもちろんのこと、政治的にも欧州の力をそぐだろうし、英国のEU離脱は、これに反対しているスコットランドの独立気運をさらに助長し、連合王国は瓦解してしまうと主張する。

 ただ国民レベルでは、近年のEU内のより貧困な諸国からの英国への移民流入が失業率を上げ、治安を悪化させているのみならず、社会保障費の拡大に繋がっていることへの不満が充満している。キャメロン首相は国民投票前に英国の加盟条件を見直し、特に移民への社会保障給付の制限等について交渉を行うと伝えられるが、これは自由な人の移動という欧州統合の基本理念にも触りかねず、難航が予想される。