通信業界を離れてからは稲盛さんにお目にかかっていませんが、約15年間、鍛えに鍛えられました。おそらく100回以上、「バカタレが!」という叱咤を受けてきました。今も世界で最も尊敬する経営者ですし、僕の座右の銘は「動機善なりや、私心なかりしか」です。新しいことを始める時に、動機は善なのか、そこに私心はないのか、という意味の稲盛さん自身の言葉です。

 これは、1984年に第二電電が通信事業に新規参入する際に自らに厳しく問うたという考え方で、ベースにあるのは“世のために人のために尽くす”という思いです。稲盛さんを引き合いに出すのはおこがましいのですが、僕も根底にはそういう思いがあるからこそ、これまで存在しなかったプラットフォーム・サービスの構築という仕事に信念を持って取り組めているのです。困難な状況は多々ありますが、旧態依然とした住宅関連業界が少しずつよい方向に変わっていけば、それだけ人々はよりよい住まいを手にできることにつながります。

株式上場を考える前に
本物のエンジンになる

──現在までにトライアルなどで仮契約した建築会社は約4000社あるそうですが、その先の正式契約に進んだ会社はどれぐらいあるのですか。

 まだ十数%に過ぎません。世の中にK-engineのサービスを浸透させるためには、この比率を上げていくことが最大の課題です。一度でも試してみてくれた人が正式契約に進む割合は、せめて50%まで持っていきたい。それぐらいにならないと、やはりプラットフォームと胸を張れるものにはなり得ません。

 今日までの1年間は、毎日が試行錯誤の連続だったのですが、最初のうちは「このシステムは非常に便利です!」と機能を前面に打ち出して訴求していたことから、建築業界向けの新しい見積もりソフトだという誤解を与えてしまいました。意に反して、矮小化して見えてしまったことは誤算でした(苦笑)。

 住まいづくりのプロセスは、①商談→②契約・発注→③工事→④引き渡し・アフターサービスという流れで進みますが、現在はすべての入り口になる商談の段階にフォーカスしています。新築・リフォームを問わず、施主と工務店が初めて顔を合わせる際に、K-engineの利便性を最大限に感じてもらえるように訴求ポイントを変更したのです。工務店の関係者にとってどれだけ使い勝手がよいかという点では、もっともっと改善・改良の余地が残されています。

 将来的には、株式公開も視野に入れていますが、まずはプラットフォームとして恥ずかしくない“本物のエンジン”になる必要があります。これからも、地方での草の根セミナー活動も含めて、まだまだ全力で走り続けます。というか、株主からは「結果が出るのが遅い」と言われていますので必死ですよ。