「リスクが嫌いな人」は確かにいる
投資は無理にするべきものではない
先日、単行本の打ち合わせのために、ある出版社の編集担当の青年(といっても既に38歳だ)が筆者のオフィスを訪ねてきた。お金の運用に関する本を作りたいという用件だったが、「あなた自身はどのような運用に興味があるのか?」と質問したら、「僕の本音としては、一切リスクを取りたくないのです」と答えた。
彼には、1年前にある大手企業から出版社に転職した経緯があった。前職の退職の際に受け取った「虎の子」(本人の弁による)の退職金数百万円を、絶対安全な方法で、しかし、なるべく有利に運用したいのだという。「いざという時には、これだけが頼りのお金なので、株式とかのリスクは嫌なのです」と言っている。ちなみに、彼が書いた企画書にあった、書籍の仮タイトルは「I love Low Risk !」(“love”の代わりにハートのマークだが)だった。
金融資産の運用でリスクを取ることは一切嫌だと考えている人は、少なからずいる。確かなものであってほしい自分の金融資産の価値が、毎日変わる株価のようなものの影響を受けることが半ば生理的に許せないのだろう。
「リスクを取って投資した方が有利です」あるいは「将来のインフレの可能性を考えると、多少はリスクを取った方がいいと思います」などと言っても、こうした人に効果は乏しい。
確かに、たとえば、金融資産の価値変動を気にせずに済む方が仕事に集中できるということなら、無理に株式や投資信託に投資する必要はない。投資は無理に強いるべきものではない。やりたい人が、自分の計算で得だと思った場合にのみやったらいい。投資に絶対はないのだから、商売を作りたい金融マンや、根性の腐ったFPがしばしばやるように、「将来のインフレ」や「老後不安」で脅してまでリスク資産への投資に誘導するのは、明らかにやり過ぎだ。
そこで、できるだけリスクを取らない運用はどうするのがいいかについて、しばし考えてみた。