特に、“ペイント・マイ・ハート・レッド”が素晴らしい。フランスの短編映画『Mon Coeur Est Rouge』のための音楽です。ピアノソロでこれだけの音楽が創造できるのか、と感嘆します。旋律と和音とリズムを一台のピアノで構築。その骨相がとにかく素晴らしい。もちろん神の指が紡ぎだす一つ一つの音は不純物はなく透明です。

世界に誇る日本のヒップ・ホップ
アーティストが奏でた“秋の色”

◆Nujabes“カラー・オブ・オータム”

 ヒップホップとは何でもありの究極の文化です。過去の録音の一部を切り取って永遠に繰り返すループを創るもよし。お気に入りの音や旋律の断片やリズムをコラージュするもよし。もちろん、自分の演奏を軸にしてもよし。要するに全ては自由自在です。演奏が下手でもノープロブレム! 新しい音楽を創造する発想さえあれば、デジタルテクノロジーを活用してアイデアを形にできます。自分を信じてピースを根気強く積み重ねていく。音宇宙を構想するチカラが全てです。

 本名・瀬葉淳をローマ字にして逆から綴ったNujabes。日本が世界に誇るヒップホップのアーティストです。Nujabesuは2枚のアルバムを発表、センセーションを起こします。一切のセールスプロモーションを行わず、音楽だけで勝負する矜持が眩しく、将来を嘱望されていましたが、新作の制作途中で不慮の事故で夭折。36歳でした。残された同志が完成させたのが「スピリチュアル・ステイト」(写真)。泉の如く、溢れ出る音響。翼を得て天高く舞う音たちが織り成す旋律。哀愁と希望が一緒に攪拌されて生まれた真のインターナショナルな響きです。小品“カラー・オブ・オータム”は表題どおりの秋の色です。

 懐かしの名盤・隠れた名盤を是非、音楽の秋のお供に。

(音楽愛好家・小栗勘太郎)