“賛成すれば票を失う”民主党
クリントンのTPP不支持は続くか

 労働組合などを支持母体とする民主党議員は、相当数がTPP反対に回るだろうと言われている。UAW(全米自動車団体)などの反対は強い。さらに民主党の最有力の大統領候補であるヒラリー・クリントン前国務長官は、「現時点で承知する限りではTPPを支持することはできない」と表明している。

 クリントン前国務長官は、自身の著作でもTPPは貿易協定の黄金のスタンダードであり、アジア政策の柱であると述べていただけに、仮に選挙戦術とはいえ(現在クリントンに次ぐ有力候補のバーニー・サンダースはTPPに明確に反対しており、賛成すると労働組合の票を失うとされる)、オバマ大統領にはダメージは大きい。

 クリントン候補の声明で、TPPを支持する有力な民主党大統領候補もいなくなる事態に、噂されていたバイデン副大統領の出馬の可能性も大きくなったと言われている。もっとも、今月14日に行われた民主党候補の討論会ではクリントン候補は圧倒的に優勢を保ったと言われており、もしクリントン候補の指名可能性が高まっていけば、クリントン候補もTPPについて強い反対の立場をとる必要はなくなるのかもしれない。

中露の連携、中東の混迷で問われる米国の指導力
承認できなければ国際社会での地位が失墜

 TPPの米国議会承認に向けての最大の説得の論理は、戦略論である。共和・民主両党の議員が自らに問わねばならないのは、国際社会におけるアメリカの地位である。現在、米国は国内の分極化現象の中、国際場裏で必ずしも十分な指導力を発揮している訳ではない。

 他方、ウクライナ問題以降、ロシアは中国との関係強化に走り、中央アジアでも中露協力の流れが明確となってきている。イランの核合意成立後、イランとの連携も目につきだしている。シリア問題は各国の思惑の中で混乱を極めているが、ロシアはシリアからの難民問題に苦しむ欧州の足下を見透かし、混乱を収めるためイスラム国を駆逐するとして同国への空爆を始めた。しかし現実には、これはアサド政権を助けるため反政府軍に対する空爆ではないかと疑われている。

 シーア派のアサド政権の維持のためイランとロシアは連携し、アサド体制の駆逐に強い主張をする米国の指導力や戦略のなさへの批判が、徐々に表面化している。このような国際情勢の中で、もし米国がTPPの議会承認を得られない事態となれば、単に上述した日米などの戦略的利益を失うことになるのみならず、米国の国際社会における立場を大きく損ねることになるのではなかろうか。これは何としてでも避けなければならず、最終的には良識が働くことになると信じたい。

 日本の国内においてもTPPをめぐる議論は来年と言われる国会審議を中心として厳しさを増すと思われるが、その成立に必要な米国の動向には目が離せない。