資生堂のマーケティング戦略の中に、
コミュニティあり

企業のファンが、自発的に問題解決に動く!

――サイトがオープンして、いかがでしたか?

仙田 オープン当初は、コメントが一、二行しか書き込まれず会話が盛り上がらなかったらどうしようと心配していましたが、皆さん様々なご意見や感想を詳しく書き込んでくださり、深い会話が展開し安心しました。

資生堂コミュニケーション統括部メディア戦略室デジタルメディアグループの渋川由香梨さん。「おめかし会議」の運営を担当する

渋川 私は「おめかし会議」の運営を担当していますが、初期の頃はお客さまから資生堂に対して直接質問をいただくことが多くありました。ただ、すべてに答えていると、オーナー(資生堂)とユーザー(お客さま)の1対1の会話の場になってしまいます。どこまで答えていいものか、エイベック研究所様にアドバイスをいただきながら間合いをはかっていました。今は、弊社への質問を除き、ユーザー同士で解決できそうなトピックや会話には一歩引くようにしています。

臼井 私は初期の頃、返答が必要な弊社への意見や質問、炎上しそうな発言がないかといったリスク対応の目で見ていましたが、その心配は全くありませんでした。逆に、薬事法等の関係もあって弊社としての回答には時間がかかる質問に関して、詳しいユーザーが代わりに回答して、疑問が解決するという例が増えていきました。例えば、ある商品に「夜用と昼用で値段に差があるのはなぜか?」という質問が挙がった際には、ユーザーが商品に使用されている成分を比較して、正確に答えてくださいました。

岡田 あるユーザーの方が、自分の顔の半分に新製品、半分に従来品を使って使用感の違いなどを比較し、詳しい使用感をレポートしてくださったのには驚きました。それを見た他のユーザーも「その新商品が欲しい」と発言されていました。

 それから、ユーザー同士でキャンペーン情報をいち早く教え合ったりもされています。我々が掴みきれない支社や各店が独自に実施しているキャンペーンなども教えてくれるので、その点でもありがたい情報源です(笑)

エイベック研究所マーケティング本部スポンサーサポート部・中西一毅さん

中西 そうした無償の行動は他のユーザーから拍手をもらうのがうれしいのかもしれませんね。

仙田 通常のSNSでは意見の違う方ともつながっているので、テーマによっては発言自体に慎重になったり、発言してもスルーされたりということがありますが、コミュニティは同じ資生堂ファンの集いなので安心して話せるし、受け入れる方も好意的なのだと思います。

遠藤 そうした話ができるリアルの場はなかなかありません。リアルには成立しにくいコミュニケーションを、コミュニティという場で行っているわけですね。では、資生堂様からユーザーへは、どのような投げかけをすることがありますか?

臼井 「おめかし会議」は2つの会議室から構成されており、1つの部屋では基本的に「夏のメークの裏技を教えて」など美容全般に関わる質問を提示し、好きなブランドに関わらず、美容に興味のある方ならだれでも会話に参加できるよう留意しています。ユーザーが意見を交わす中では当社の商品を取り上げていただくこともありますので、そのようなご意見はもう1つの部屋で実施するブランドに関連したイベントやキャンペーンを検討する際の参考にしています。

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