しかも、当の子どもは再婚相手のことを「パパ」と呼ぶよう躾けられてきたせいか、また家のなかで自分の居場所を確保するのに必死だったのか、子どもは再婚相手に懐いているように思えたそうです。そんななか8年ぶりに和彦さんが子どもの前に姿を現したらどうなるでしょうか?

 正直に喜んでいいものか、でも母親や「新しい父親」の視線を感じると素直に気持ちを表せないという複雑な立場に置かれ、混乱させてしまうに違いありません。一方で和彦さんも今現在は仕方がないけれど、将来的には子どもの成人式、入社式、結婚式には参加してみたいという希望を捨てきれずにいました。

 和彦さんが出した結論ですが、前妻が今回の養育費を免除してくれれば、和彦さんは面接交渉権を放棄しても良いと提案したのです。これは「今後一切、子どもに対して接点を持たない」という意味で今だけでなく、先々もずっとです。和彦さんは後日、こんなふうに振り返ってくれました。「薄情な奴だと思われても仕方がないです。どんな批判も覚悟の上で、養育費の免除を優先したかったのだから」

「再婚しようと養子にしようと養育費を今まで通り、支払うべきでしょ!」

 手ごたえを掴みかけた矢先、前妻はこんなふうにちゃぶ台返しをひっくり返してきたそうです。暴論を平気で口にするような人間だと分かっていても、さすがに和彦さんもショックを受けた様子でした。確かにモンスター女ですが、とはいえ「実の子の母」です。和彦さんはなるべく穏便に済ませられるよう今までは強い物言いをせず、気を遣ってきたのですが、ここに至ってはもはや手加減をする必要はなく、もはや容赦をすることはないでしょう。和彦さんも前妻に負けず劣らず強い態度に出ることにしたそうです。

扶養義務は前夫、再婚相手
どちらが優先されるのか

 ところで過去の判例(神戸家裁姫路支部審判・平成12年9月4日、仙台高裁・昭和37年6月15日など多数)によると、子が再婚相手と養子縁組をした場合、子の扶養義務は実父(和彦さん)より養父(再婚相手)の方が優先するという理由で実父には養育費の負担義務がないという判断を裁判所が示しているようです。裁判所の公式的な見解と前妻の個人的な意見と、どちらが優先するのかは言わずもがなです。このように裁判所が和彦さんの意見にお墨付きを与えてことを強調して「だから口をはさむ余地なんてないはず!」と言い放ったそうです。

 本来、養育費を改定するタイミングは支払義務者(和彦さん)が見直しを求めた時点ではなく改定対象になる事情変更が起こった時点でしょう。今回の場合、前妻が再婚したのは7年前ですから、和彦さんがその気になれば7年分までの過払い分(毎月16万円×84ヵ月)として1344万円を返すよう前妻に対して請求することも可能といえば可能です。しかし、前妻の家庭は和彦さんからの養育費がゼロになり、主な収入源が再婚相手の年収(600万円)だけ。専業主婦の妻と高校生、中学生の連れ子を養っていくので精一杯で、その上でさらに和彦さんに対して過去の養育費を返すのは厳しいでしょう。そのため、和彦さんは「将来の養育費を免除してくれれば、過去の養育費は返さなくても良い」という提案をしたのです。