面談中にメモを取る男性写真はイメージです Photo:PIXTA

前回記事で「転職後すぐに結果を出そうとする人は人間関係で失敗する」というお話をしました。本稿では、転職後すぐに取り組むべき「基本的信頼」の作り方を紹介します。具体的な方法論として、人事のプロである安藤健さんが実際に使った「社員閻魔帳」の絶大な効果と作り方をご本人から教えてもらいました。(人材研究所ディレクター 安藤 健、構成/ライター 奥田由意)

最初に築くべきは
「成果」ではなく「印象」

 転職すると、多くの人は「信頼されるために、まず成果を出さなければ」と焦ってしまいます。ですが、これは多くの場合、間違いです。

 成果よりも先に、人間関係の構築、つまり「この人は信頼できる」という印象を築くべきです。「印象形成」という心理学の概念があり、一度固まった印象を後から変えるのは非常に難しいことがわかっています※。

 まだ「柔らかい鉄」である入社直後の印象だからこそ、組織の形にうまく適応させることができるのです。

人事コンサルが使う
「全社員閻魔帳」の作り方

 少し私自身の経験をお話ししましょう。以前、ある企業に人事担当者として2年ほど半ば常駐するプロジェクトに携わったことがあります。

 社外の人間でありながら、組織の根幹である人事制度を作るという、いわば「疑似的な中途入社」のようなポジションでした。中途社員以上に、早く成果を出すことが求められます。

 プロジェクト開始時、私には明確に決めていたことがあります。それは前述した「インフォーマルネットワークを築くこと」でした。最初の2カ月を「分析期間」と位置づけ、成果を出すことよりも、組織の力学を徹底的に把握することに集中しました。

 そこで作ったのが自分しか見ない「全社員閻魔帳(ぜんしゃいんえんまちょう)」です。会社には、組織状況を分析するためだと言っていましたが、私の裏テーマは「人心掌握」でした。