頭を抱えて悩む男性写真はイメージです Photo:PIXTA

中途入社で嫌われる人が無意識に口にしてしまうNGワードと、中途入社した会社に上手く溶け込む方法を解説します。(人材研究所ディレクター 安藤 健、構成/ライター 奥田由意)

【後編】「中途入社で嫌われる人」に人事コンサルがオススメする〈社員閻魔帳〉がスゴい!

新卒にはない
中途ならではのジレンマ

 まず大前提として、中途入社者が新しい組織で活躍するというのは、想像する以上に大変なことです。

 どんなに輝かしい実績や経験があったとしても、それらは一旦リセットされて、まっさらな「外部の人間」として新しい職場に飛び込むことになるからです。

 実際、ビズリーチの調査(https://media.bizreach.biz/14158/)によれば、ミドル層の4割が転職後に早期離職(調査は3年以内を早期離職と定義)しているというデータがあります。35歳から45歳という、市場価値が高く、採用側にとっても採用難易度の高い人材であるにもかかわらず、これだけの割合で離職してしまうのです。

 この難しさは、心理学や組織行動論の分野で「組織再社会化」というプロセスで説明できます。

 新卒社員は、学生から社会人になる際に、その組織独特のルールや価値観、人間関係に適応する「組織社会化」を経験します。

 しかし、中途採用で入社した人は新しいルール、価値観、人間関係にゼロから適応し直す「再社会化」を行わなければなりません。これが非常に難しいのです。

 中途入社者が直面する最大の壁――。それは「中途ジレンマ」とも呼べるものです。中途入社は、新卒と異なり、「早く成果を出せ」という高い期待をかけられています。本人も「早く成果を出さなければ」と焦っていることが多いでしょう。

 しかし、そもそも仕事は一人では完結しません。成果を出すためには、周囲の支援や情報が不可欠です。

 例えば、過去の事例を参照したくても資料がどこにあるのかわかりませんし、問題に直面したときには誰に聞けばいいのかといったことは転職直後にはわかりません。

 組織の意思決定においても、「この稟議は正規のルート(課長)に上げる前に、まず担当課長に通すべき」といった、社内のパワーバランスに基づいた、見えない暗黙のルールなどが無数に存在します。

 これらはすべて、周囲との信頼関係、すなわち、前回述べた「インフォーマルネットワーク」の中でしか得られない情報です。

 ところが、その周囲との信頼関係は、すぐには生まれません。そして皮肉なことに、周囲から「この人は仕事ができる」と信頼されていく(評価されていく)ためには、成果が必要なのです。

 成果を出すためには信頼が必要だが、信頼を得るためには成果が必要――。この鶏と卵のような問題が、多くの転職者を苦しめる「中途ジレンマ」です。

 では、この突破口のないように見えるジレンマを、どう解消すればよいのでしょうか。本稿では、「転職後最初の3カ月の過ごし方」「中途入社して嫌われる人が無意識に使うNGワード」「うまく溶け込める人に共通する3つの行動」の観点から説明します。