「例年になく見通しが難しい」
自動車メーカーのなかでとりわけ好調なホンダの2010年3月期営業利益は3637億円。前期比で倍増となったが、今期予想はわずか10%増。近藤広一副社長は好業績のなかで先行きへの不安をあらわにした。
4月末に発表された5社(ホンダ、マツダ、三菱自動車、ダイハツ工業、日野自動車)の前期決算はいずれも営業黒字。各国の新車購入支援策で販売は底上げされ、新興国市場の需要も拡大。コスト削減効果も奏功して最悪期を脱した。5社揃って今期営業利益で増益を予想したが、一方で各社は今、3つの「反動」に怯えている。
筆頭は購入支援策からの反動だ。日米欧中など各国で減税や補助金などが実施されたが、これが順次終了しつつある。国内もエコカーへの補助金が9月に終了し、下半期は反動減が避けられない。
2つ目は、鋼材をはじめとする材料高騰への懸念だ。鉄鋼メーカーと交渉中も、今期予想に材料高が織り込まれた。前期は材料費減に救われ、今期は材料費増に苦しむ格好だ。
3つ目は世界で日本勢の地位が揺らぎつつある点だ。米国勢の衰退を横目に消費者ニーズをつかんで躍進した日本メーカーだが、リコール問題で苦しむトヨタ自動車は値引き幅を高めることで消費者離れを食い止めようと必死である。ホンダにしても米国で「うちがもともと強かった『シビック』『アコード』などのパッセンジャーカー(乗用車)領域に米ビッグスリーが力を入れてきている」(近藤副社長)と警戒する。米国では韓国の現代自動車が存在感を強め、世界最大市場となった中国では自国勢の力が増すばかりだ。
5月中旬にはトヨタ、日産自動車、スズキなどの決算も発表されるが、不安要因は程度の差はあれ、共通する。そんななかで次世代車開発、新興国開拓への投資はかさむ。徹底したコスト削減を続けてもいられない苦しさがのぞく。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 臼井真粧美)