ほぼワンコインのトルコライスが素敵だ!

 常盤仙食堂の三大特長の最後は、トルコライスだ。

亀有の誠実無比な食堂に、<br />「ご飯と味噌汁がおいしくなければ意味がない」<br />という“定食屋の覚悟”を学ぶ

「本来のトルコライスはドライカレー、チキンライスにとんかつとスパゲティがあわさったものです。しかし、うちでは520円のワンプレートメニューをトルコライスと銘打っています。メンチカツ、カレーご飯、マカロニサラダ、千切りキャベツのトルコライスです。味噌汁もちゃんと付きますよ」

 繰り返すけれど、トルコライスは520円だ。アジフライ1枚をトッピングしても750円。あまりにもリーズナブルではないか。

 わたしは訊ねた。

「どうして、この値段でやっていけるのですか?」

 篤は間髪を入れず、答えた。

「ぜんぜん無理です。やっていけません。儲かりません。ですが、お客さんがいるから店をやめられないのです。家賃がタダで、従業員を雇っていないからできることでしょう。僕は朝の9時から夜の10時まで働いています。それでようやく生活しています。もし、おふくろか僕のどちらかが倒れたら、店を閉めるしかありません」

亀有の誠実無比な食堂に、<br />「ご飯と味噌汁がおいしくなければ意味がない」<br />という“定食屋の覚悟”を学ぶ

 ちなみに、亀有銀座商店街振興組合の公式サイト「ゆうろーど」によれば、「亀有でも大正から昭和にかけ2次産業が発達し、町の繁栄をもたらします。大正の終わり頃からセルロイド人形を中心とした玩具づくりが盛んとなる一方、日本紙業や日立製作所といった大工場が次々と建設されます。特に日立製作所亀有工場は、戦時中の徴用などを含めると2万4千人もの従業員がおり、人口1万人に満たない町に活気を与えていました」とある。

 往時は、常盤仙食堂もさぞや賑わっていただろう。

 常盤仙食堂に限らず、おいしくて、安くて、量がいっぱいある食堂は家族経営だ。そうでなければ存続できない。客にリーズナブルな価格の料理を提供しようと思ったら、身を粉にして働くほかはない。

スパイシーなカレーに、先代のこだわりを見る

 トルコライスのご飯にかかっているカレーはいわゆる定食屋のカレーの味ではない。わたしは家庭で食べる甘いそれを想像していたのだが、ここのカレーはスパイシーで辛いものだ。

 淑子さんが言った。

「辛いと言って残す人もいるんですよ」

 定食屋のカレーが辛いなんて、そんなことが可能だったのか?

「うちのカレーは玉ねぎを炒めて、バナナ、リンゴをすり潰して入れます。ただし、それだと甘くなってしまうから、カレー粉を炒ってから投入する。まあまあの量を入れます。そうすると、辛くてスパイシーなカレーになります。うちの親父がカレーは辛くなくてはダメだとも言っていました」

 常盤仙食堂の料理は定食屋の本道だ。しかし、メニューにバラエティがあり、かつ、カレーは辛い。ついでに言うと、日替わり定食は580円で、B定食が630円。通常は700円の定食が値下げされて出てくる。580円のものをわざわざ作るわけではない。出血大サービスという言葉がぴったりの食堂だ。亀有にある常盤仙食堂はわたしにとって、庶民にとってひとつの希望だ。 


亀有の誠実無比な食堂に、<br />「ご飯と味噌汁がおいしくなければ意味がない」<br />という“定食屋の覚悟”を学ぶ

「常盤仙食堂」

◆住所
東京都葛飾区亀有5-38-10
◆電話
03-3605-5632
◆営業時間
11:30~15:00、17:00~21:00
土曜日休み