2001年の「9.11ショック」を超える不況に見舞われたエアライン業界。破綻した日本航空(JAL)のみならず、全日空(ANA)も2期連続赤字に沈んだ。大胆なリストラで体力を回復する一方、日米オープンスカイや緻密な販売戦略構築で国際線拡大戦略に打って出る。「アジアナンバーワン」の野望に勝算はあるのか。(「週刊ダイヤモンド」編集部、津本朋子)
「最近、おたくの座席が取りにくいんだよね」──。
長年、日本のフラッグシップエアラインとして君臨したJALの破綻劇から3ヵ月。ANAには、こうした声が多く寄せられている。
JALは1兆円近い公的資金が注入され、変わらず営業を続けているものの、羽田-伊丹(大阪)、羽田-千歳(札幌)など、主要路線の乗客数を比較してみれば、明らかに顧客がANAに流れている傾向が見て取れる。
しかし、ANA社内には“敵失”に安堵する雰囲気はまったくない。
実際、2010年3月期決算は下方修正し、2期連続赤字となった。08年のリーマンショック以降、日本のみならず、世界中のエアラインが乗客数減に直面。赤字エアラインが続出した。ANAも例外ではなく、ビジネス客の減少などによる単価ダウンのあおりを受けた。
それだけではない。10月には羽田空港に4本目の滑走路が完成。昼間にはアジア路線、深夜早朝時間帯には、欧米長距離路線への就航が解禁される予定だ。
東南アジア最大の格安航空会社(LCC)であるエア・アジアも就航に名乗りを上げるなど、LCCも含めた競争が本格化してくるのは間違いない。
「なにを差し置いても、今期こそは黒字化を達成しなければ、金融機関や投資家の見方が変わってしまう」(平子裕志・企画部長)。前期も1000億円以上のコスト削減を行ったが、今期も引き続き860億円のコスト削減を実施する予定だ。