岡山大学・津田敏秀教授が
外国人特派員協会で発表したこと

岡山大学の津田敏秀教授が、2015年10月8日に、外国人特派員協会で重要なことを発表してくださいました。
福島県内で発生している甲状腺癌は、間違いなくフクシマ原発事故が原因である」ということを発表したのです。

 津田先生は、岡山大学大学院環境学研究科教授で、専攻は疫学、環境医学、因果推論、臨床疫学、食品保健、産業保健です。わが国の疫学のエキスパートです。

 これは、津田先生がそのときに出した、チェルノブイリ原発事故の被曝国ベラルーシで、事故後にどのように甲状腺癌が増加したかを示すグラフです。
 1986年4月26日に起こったチェルノブイリ原発事故は今から29年前ですが、この事故によってソ連が崩壊しました。
 事故は、ちょうどベラルーシの国境に近いウクライナで起きました。
 このグラフは、現在のベラルーシで、4年後から5年後にかけて、子どもたちに甲状腺癌が増えてきたときの発症数の変化を示しています。

 左端の赤い矢印のところが、チェルノブイリの事故が起こった1986年です。それまでは変化はないのですが、そこから4年後が、次の赤い矢印のところです。そしてさらに、5年後、6年後、7年後、8年後が示されています。フクシマ原発事故を経験した私たち日本人は、このグラフの4年後にいることを示しています。

 福島の子どもたちは、私が計算した数字では福島県全域をまとめると、通常の72倍以上ですが、津田先生は、地域別に統計処理をして、細かく解析していますので、数字が少し違いますが、二本松市、本宮市、三春町、大玉村がある福島県中央部では、平常値の50倍を超えています。いずれにしろ、チェルノブイリ原発事故のグラフを見れば、今後、飛躍的に、この甲状腺癌の数が伸びてゆくと予想されます。

 このことについては、津田先生の記者会見をインターネットで流してくれたOurPlanet-TVの白石草さんとの対談にくわしく解説していますので、そのリンクをご覧ください。このときに、津田先生が非常に大事なことを言いました。

福島県の人口密度は、チェルノブイリ原発事故の最大被災地のゴメリより3倍以上も高い。人口密度が3倍以上だから、もっと大変なことが起こる可能性が高い」と。

 このデータが外国特派員協会で発表された日に『ニューヨーク・タイムズ』など、欧米の一流紙では大きく掲載されました。
 でも、日本の新聞はほとんど扱わず、出ても、まったく見えないほどの小さな記事です。
 これは、どう考えても、オカシイ
 私が購読している「東京新聞」は「原発反対」をはっきりと打ち出している新聞ですが、被曝の危険性については、ほとんど書いていない。小さなベタ記事です。

 私たちには、伝えられるべき事実がまったく伝わってこない、非常におそろしい国に住んでいるわけです。

 私は大手メーカーの技術者でしたが、退職してから公害問題に取り組む中で、海外に水俣病やイタイイタイ病、薬害のスモン病などを翻訳して伝えるようになり、数多くの医学の専門書の翻訳に携わってきた人間ですので、津田先生がおっしゃる意味が非常によくわかります。

 チェルノブイリの甲状腺癌の発生率については色々なグラフがありますが、広島の医師がベラルーシの首都ミンスク臨床悪性腫瘍病院、つまり癌病院の統計を調べたグラフを、私が分りやすく書き換えたものを見てください。子どもたちに甲状腺癌が大量に発生した変化を示したグラフです。横軸が、年の進み具合です。

 このグラフでは、1986年にチェルノブイリ事故が起こって、5年目ぐらいから甲状腺癌(青線のグラフ)が急増し始めていますね。一見すると、このグラフでは、しばらくたって患者数が減り始めていますが、実際には減り始めたのではないのです。

 この当時14歳以下だった子たち(青線のグラフ)が、この統計をとり始めて以来、次第に大人になってゆきますね。ですから、右側の15歳以上の年齢層に移行していったのです。
 すると、15~18歳の子どもたち(赤線のグラフ)の甲状腺癌が、急激に増え始めています。そしてこの子どもたちは、15~18歳でわずか4年間の年齢層ですから、4年後には19歳以上へ、さらに成人に移行して、今度は成人の甲状腺癌が増え始めてきたのです。
 甲状腺癌は、このように長い期間にわたって、成人になっても発生し続けます。
 今、福島では18歳以下を調査対象にして、それより上の年齢層の人たちについては一切無視していますが、フクシマ原発事故からもう5年近くたっているのですから、19歳以上の人についても急いで調査しなければなりません

 20歳以上の成人でもしっかり検査しないといけない段階なのに、一切やっていません。福島県で原発の被曝問題に関わっている担当者は、何もわかっていない人たちがやっている。
 そして、おしどりマコちゃんが私との対談で語ってくれたように、茨城県などの周辺の県でも、甲状腺癌が増えているのです。放射能は、東京にも大量に降りつもったのですから、東京でも大量に癌が発生するでしょう。今は、こういうおそろしい状態です。