顕在化しづらい悩みが明らかに
在宅介護者向けSNSはなぜ成功したか

「介護がテーマ」「高齢者も多い」ので温かくシンプルに

大王製紙が運営する「けあのわ」

――本サイト立ち上げまで、どのような点を重視して進めましたか。

寺山 まずサイトの名称は「もう1人でがんばらない介護生活」「快適な生活を目指して」というような一目でサイトの目的が分かるような説明書き風のタイトルがいいという方向で話を進めていたのですが、広告宣伝部部長から「GOO.N MOM(ぐんまむ)」のような親しみが持てる短い名称にしたら、というアドバイスがありまして。それで4文字にこだわって、“ケアを通じてみんなでつながる”という意味を込めた「ケアの輪」→「けあのわ」を思いつきました。

佐藤 介護というテーマで比較的ご高齢の方も多くご覧になるため、文字の大きさが変えられることはもちろん、柔らかい色使いで見やすい工夫をしています。白内障の方でも見やすいような色使いにするためにデザイナーには黄色い眼鏡をかけてデザイン開発に取り組んでもらいました。

エイベック研究所マーケティング本部スポンサーサポート部二課の佐藤玲緒奈さん(左)と小林梨沙さん(右)

小林 また、シンプルに分かりやすくという点にも気をつけました。例えば、訪問した方がどこにいるのかがすぐにわかるように、サイトは掲示板である「おしゃべりルーム」と情報コンテンツ「介護でつながる輪」の2つだけというシンプルな作りにしています。

寺山 それから、介護にはいつか「終わり」がある、ということも、このコミュニティ独特のものだと思います。いろいろな思いを抱きながら見ていただいているはずなので、コンテンツの内容にも細心の注意を払っています。また介護から離れてほっとできるような写真などのコンテンツも掲載するようにしています。

「正しいおむつのつけ方」を参加者同士で教え合う

――この9ヵ月、サイトを運営してどのような発見がありましたか。

寺山 商品の使い方について、当然皆さんが知っていると思っていたことが実は知られていなかったり、想定外の使い方をしていることに改めて気づきました。例えば、もったいないから半分ずつ切って使う、漏れが心配だから2枚重ねている、など。コミュニティ参加者に「正しいおむつのつけ方」についてアンケートを実施したところ、「知らなかった」という人が約9割という結果が出て、驚きました。これではどんなに商品改良をしても、そのメリットをお客様に実感していただくことは到底できません。

大王製紙ホーム&パーソナルケア事業部ヘルスケアBMD・部長代理の千葉さん

千葉 使い方が悪くて漏れたとしても、紙おむつとはそういうものなのだと思い込んでいる人が多く、商品の使い方が間違っているという発想にはならないこともわかりました。

小林 ただ、今では商品知識が豊富な方も多く参加しているので、参加者同士でアドバイスしあって解決しているケースもあります。先日は、漏れの最大の原因は“ギャザーの隙間”だと教え合っていて、参加者間の学びが進んでいると実感しました。それから、あるユーザーさんが、別のユーザーさんのエピソードを読んでマンガにしてくださってコミュニティ内で盛り上がっているんですよ。弊社は数多くのコミュニティ構築・運営をお手伝いさせていただいていますが、こんな事例は初めてで、それだけ参加者同士の繋がりが特別なコミュニティなのだと思います。

大原 私たちメーカー側は、コミュニティ内でよほどの問題が起こらない限り立ち入ることはありません。あくまでも普段は、生活者の方たちのコミュニケーションの場を提供するというスタンスで、参加者の皆さんのやり取りを大事にしています。

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