棚上げされた
資本金1億円以下への拡大

 ただし、資本金1億円以下の中小企業は外形標準課税の適用外のまま。国税庁によれば、日本の申告法人数は約260万社。そのうち、約99%が資本金1億円以下だ。つまり、日本企業の99%は、引き続き外形標準課税の対象とならない。

 しかし、今後も資本金1億円以下の企業は安心していられるかといえば、そうでもなさそうだ。「資本金1億円以下への範囲拡大はいずれ行われるのではないか」と予測する税理士は少なくない。実際、過去にも資本金1億円以下への拡大が議論されたことはあった。

 中小の赤字企業の中には、いわゆる「休眠会社」も数多いと言われている。また、既に競争力を失っているのに生き長らえている「ゾンビ企業」だったり、さらには意図的に経費を計上し、赤字にして課税逃れをしている企業もある。こうした企業を市場から退出させ、産業の新陳代謝を図る。これはアベノミクスの意図するところでもある。

 ネックとなるのは「政治的反響」(ある税理士)だ。実際、過去には自民党議員から「特に中小は非常に厳しい状況。これは会社存続に関わってしまう」などとする反対意見が相次ぎ、棚上げされてきた。

 外形標準課税の強化を見越してか、昨年には吉本興業やシャープなどの有名企業が、資本金を1億円以下にするとの施策を打ち出し、話題となった(シャープはその後、5億円にすることで決着)。外形標準課税の適用外を目指すだけでなく、繰越欠損金控除も中小企業は大企業と比べて優遇されている。こうした中小企業向けの税の優遇策を幅広く享受しようとするのが狙いだったと見られる。

「そもそも会計上は、資本金自体にあまり意味がなく、企業規模を示すものとしても適切ではありません」(PwCジャパンの鈴木代表)

 政府も資本金で中小企業か否かを判断することが正しいかどうかは、疑問を持っている。たとえば昨年末の税制改正大綱には「資本金1億円以下の法人に対して一律に同一の制度を適用していることの妥当性について、検討を行う」との一文が入っている。つまり今後、資本金以外、たとえば売上高や所得など、新たな指標で中小企業か否かを判断される方向だと言える。

 こうした流れを見てみると、赤字の中小企業がこれまで通り、税金をあまり払わなくて済む状況は、確実に変わりつつあると言えそうだ。

(ダイヤモンド・オンライン編集部 津本朋子)