マンションの空き部屋対策にもなる
「分散型サ高住」という考え方

(上)空き部屋の30戸をサ高住に改修した高島平団地の26街区2号棟(手前の棟)
(下)トイレ便座に手すりを組み込ませた

 コミュニティネットは、高島平団地内でも最寄りの三田線高島平駅から最も遠く、空き室の多い26街区の1棟でこの「分散型サ高住」に取り組んでいる。UR都市機構と協議の上、この11階建ての棟に点在する空き室のうち30室を全面改修した。

 玄関ドアの横に手すりを付け、部屋の内部もバリアフリー構造に変え、トイレを真ん中に移動するなど高齢者向きに手を入れた。さらに脚の弱った方の要望に応えて、便座の左右に手すりを組み込ませて、立ち上がりやすくした。

 43m2前後の同じ2DKを1DKや1LDKに改装し、3タイプから選べることにした。サ高住の改修型助成金を活用して、家賃は従来より1万円程度のアップに抑えることができ、9万3600円~9万8100円とした。そして、安否確認と相談業務にあたるスタッフは、この棟と向かい合わせに建つ別棟の一階の一室にいる。そこはコミュニティネットの事務所で兼務態勢だ。こうして「分散型サ高住」を整えた。

 このほか入居者には、常駐するスタッフの活動費として生活支援サービス費が3万6000円、それに共益費が2700円加わる。配られた緊急通報装置を入居者が毎朝押すことで、スタッフに「安否」を伝える。外泊時などに押し忘れた時には、スタッフが電話する。

 現在の入居者は健康状態が良好な人が多数だが、要介護の判定が付く状態になれば、近隣の訪問介護事業者からヘルパーに来てもらう。

改装した部屋で暮らす88歳の男性

 現在の入居者は4組の夫婦を含め32人。「エレベーターがない5階建てでは階段の上り下りが辛いので」引っ越してきた人など、同じ高島平団地から6人。近くに子供がいるので呼び寄せられた人や「この先の独居暮らしが不安」と世田谷区からの移住者など転居理由は様々。

 同じ都会暮らしからの転居者が多数で、似たような環境で同じような生活のリズムを続けたいとの思いが共通するようだ。遠隔地への移住よりも、ライフスタイルの継続を望む人には、こうした改修居室が最適である。

 コミュニティネットは、現在同じ棟の10室の空き室を改装中で、近々同じように「分散型サ高住」として貸し出す。さらに、10室も手掛ける計画で合わせて50室が改修される。同棟の部屋数は121室。すべて終われば1棟の4割がサ高住で占められる。

 高層ビル内の各階にまたがって点在する居室をサ高住に登録するだけでも珍しく、さらに、それを「分散型」に仕立てる試みは全くなかった。だが、これからはこうした集合住宅は各地のマンションの空き室活用策として普及していく可能性が高い。

 というのも、国交省は2015年度の補正予算で、改修したサ高住には助成金を大幅に引き上げることとし、同様の内容が2016年度予算でも計上している。従来は1室あたり100万円だったが、5割増の150万円へと増額したのだ。

 安倍首相の「新三本の矢」施策のひとつ、「介護離職ゼロ」の中で打ち出されたものだ。介護施設の拡充を特別養護老人ホームだけでなくサ高住を柱に据えようとする政権の強い意志が表れていると言えるだろう。