豆乃香。混ぜても混ぜても、ぱらっぱらになる一方…

「『粘りがすべて』だと思ってきた納豆が、いったいどうなるのか不安でした」と心配していた大橋さん。完成品を試食してみたところ、「豆のうまみが感じられて美味しかった」と振り返る。

「食べてみてください」と目の前に用意された豆乃香は、普通の納豆とビジュアル的にはほとんど変わらない。しかし、かき混ぜても表面に粘り気が少し出る程度だ。食べてみると粘りが少ない分、豆の豊かな味わいをじっくり楽しめて美味しい。

 さらに箸でグルグルかき混ぜてみる。混ぜても、混ぜても糸をひくどころかパラパラと粒がほどけていく一方だ。

 しかし、外国人はそもそも箸なんぞ使わないわけで、むしろそのほうが「フォークやスプーンで食べやすい」のである。

「粘りの少ない納豆」は
ごはんに合わなかった!?

 そして、粘りが激減した納豆は日本人の「納豆観」を変える事態を引き起こしていた。

「ごはんには、まったく合いません」と大橋さん。

「やっちゃいけませんね」と寺杣さんも苦笑する。

 衝撃の「白飯NG」。

「タレの味ばかり感じられて、たんにしょっぱいだけで全然美味しくないんです」

 糸引きがあってこそタレや辛子が納豆にからみ、さらに、ごはんにフィットするわけで、納豆は「粘らない」と、ごはんには合わない代物に変化してしまうのだ。

 しかしあくまで海外に向けて打って出るために作られた納豆。「固定概念を持ったままでは、いつまでたっても納豆はたかだか100円でしか売ってもらえない。新たな市場を開拓しなくては」と大橋さんは、「ごはんと決別した」納豆に大きな期待を寄せた。

 かくして、県内の産官学が結集する「いばらき成長産業振興協議会」では事業の一環として、「IBARAKI LST-1」を使用した納豆をブランドとして、海外へ発信することを決定した。

 海外での販路開拓を目指すべく、フードアナリスト・藤原浩氏にブランディングとマネジメントを依頼。

 納豆は藤原氏によって、「豆乃香」と命名された。発酵臭は「くさい」ではなく、身体によい「かぐわしい香り」。日本が誇る素晴らしい「発酵食品」という意味をこめたネーミングだ。

 かくして「勇気をもって粘りを捨てた」、茨城の「納豆革命」がはじまった。