このように純一さんは離婚から3年が経とうというのに、気持ちの整理ができていません。私の目には、離婚のせいで純一さんの心についた傷跡は、時間の経過とともに次第に風化するどころか、ますます酷くなっているように見受けられました。

(3)「育児の協力」

「こんなことが許されるんでしょうか?勝手に息子を連れ出し、実家に帰って、そのまま離婚しようだなんて!」

 そんなふうに声を荒げるのは山上拓海さん(28歳)。拓海さんは専業主婦の妻、そして5歳の息子さんと暮らしていたのですが、ある日、拓海さんが仕事を終えて家に帰ると、完全にもぬけの殻。そこに妻子の姿はなく、必要な荷物は運び出されており、ダイニングテーブルには鍵が置かれていたそうです。しかも、それだけではありませんでした。

 翌日には裁判所から呼び出しの手紙が届きました。それは妻が離婚の調停を家庭裁判所へ申し立てたことを意味していたのですが、妻の計画通りだったとはいえ、次から次へと矢継ぎ早に不幸が襲ってきたので、拓海さんは自分の身に何が起こっているのか、現実を直視できるようなるまで、かなりの時間を要したようです。

 そして離婚調停の当日。ようやく拓海さんは気持ちを入れ替えて臨むことができたそうです。なぜ直前まで?拓海さんは当時のことをこのように振り返ってくれました。

「嫁のやり方はとにかくメチャクチャですが、こんな理不尽が裁判所で通用するわけがないでしょう。僕が言うべきことを言えば、きっと息子を取り戻せるし、親権も取れるし、嫁をギャフンと言わせることができるはず!」

 拓海さんはそう信じて疑いませんでした。拓海さんは子煩悩で、息子さんが誕生してから別居の前日まで、きちんと子育てを手伝ってきたそうです。例えば、息子さんの行事には必ず参加し、保育で使う布団を用意したり、上履き入れを作ったり、育児には全面的に協力してきたという自負がありました。

「離婚=男が悪い」との決め付け
「女=社会的弱者」なのか?

 それ故に、「小さい子どもには父親より母親の方が必要だから」「母親の方が家にいるから」「母親に経済力がなければ、父親に養育費を払わせればいい」などと妻が身勝手なことを言い出しても、思い通りにはならないだろうと高をくくっていたのです。

>>後編『男は離婚で「妻子」以外に何を失うのか(下)』に続きます。

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