「組織のフラット化」という流れの中で、日本企業が踏襲してきた主任、係長、課長、部長といったライン型の役職が岐路に立たされている。果たしてこれらの細かな役職は、本当に必要なのだろうか。そこでビジネスパーソンに意識調査を行ない、社内に溢れる「要らないと思う役職」「意味がわからない不思議な肩書き」を赤裸々に語ってもらった。識者の見解も交え、日本企業における「役職」の意義と弊害を考えてみよう。(取材・文/有井太郎、編集協力/プレスラボ)
フラット化が注目される職場で
「ライン型」の細かな役職に意味はあるか?
「主任と課長からOKもらった企画書、部長の一言で全然違う方向性になったんだけど……。これなら最初から部長に見てもらった方が効率よくない?」
数年前から、「組織のフラット化」という言葉が聞かれるようになった。組織をピラミッドのように段階的な階層にするのではなく、なるべくリーダーを少なくして、それ以外の大勢をフラットな地位で並べるというものだ。
このようなキーワードが注目を浴びたのは、言わずもがな、日本企業の多くが「ライン型」と言われるピラミッド式の細かな階層組織を持っているからである。その階層を表すのが「役職」だ。ヒラ社員の上にある、主任、係長、課長、部長……。その後、役員階級になっても細かな階層は続いていく。役職で表されたライン型の組織図こそ、従来の日本企業の特徴と言ってもいい。
そんな中、ライン型ではなくフラットな組織をつくる企業も増えてきた。特に、現役ビジネスパーソンが多く関わる「主任」「係長」「課長」「部長」といった、中間管理職周辺の役職について見直す企業も多い。一時は、「課長不要論」という言葉も出たほどだ。これは、「課長をなくすことで、より大きくフラットな組織にしよう」という意味合いである。
様々な企業の組織・人材マネジメントを行う麻野進氏は、フラットな組織のメリットとデメリットについて説明する。
「フラットな組織におけるメリットは、『意思決定の早さ』です。ライン型に比べて階層が少ないので、様々な決定が迅速になります。現場の社員の判断でスピーディに動けるでしょう。ただし、フラット化にはデメリットもあります。細かな階層をなくすことは、1人のリーダーがマネジメントする部下が増えることにつながります。20人、30人という部下の仕事を1人で見られるのか、きちんと人事評価をできるのか。そこが弱点でもあります」
では、現役ビジネスパーソンは「理想の組織」をどう考えているのだろうか。ライン型組織や、それに付随する細かな役職を望んでいるのだろうか。今回は、現役ビジネスパーソンの声を紹介しながら、改めて役職の意義や弊害、そして、そこから見える組織の「あり方」を考えたい。