「ダメ上司」がのさばる
日本固有の事情とは
本連載「黒い心理学」では、ビジネスパーソンを蝕む「心のダークサイド」がいかにブラックな職場をつくり上げてい くか、心理学の研究をベースに解説している。
恐らく、日本の、いや世界中のビジネスパーソンで、ある程度の年数を働いたことのある人ならば、「上司についての愚痴」を言ったことのない人はいないだろう。アメリカの映画などでも、現場を知らない上司がエラそうに指示するのを、あきれ顔で見ている「現場をよく知っている」部下、のような構図をよく目にする。
日本でも、ソーシャルメディアに上司についての問題がアップされない日はないくらいである。
こういった、上司への愚痴は世界共通ではあるものの、先日外資系の会社に勤める友人たちと話していて、日本特有の「上司の特徴」に気がついた。筆者ら数人で話していて意見が一致したのは「日本の上司は差が激しい」ということだった。
少なくとも欧米と比べ、また筆者の住むマレーシアと比べても、優秀な上司とそうでない上司の差が激しい。日本も「上司力」をつけるために、リーダーシップ研修、管理職研究、組織論などを学ぶ企業内研修がいたるところで行われている。しかし、それらを実施できるのは、大企業と一部の中小企業のみで、全体と比較して研修参加人口は、わずかでしかない。日本の会社の大部分をしめる中小企業では、「上司力」を鍛えるような学習プログラムを提供できるような余裕はないのが実情だ。
そうなると、日本の上司力が個人の力量任せになってしまうことになるし、実際そうなっている。さらに、最近はなくなってきているものの、昭和時代からつづく年功序列制はまだ根強く、「年長」、あるいは「経験者」が昇進対象として優遇される傾向にある。
さらに、日本の会社組織では「上司」という役割の定義を明確にしていないところが多く、必ずしも適任とはいえない人事が行われることもよくある。例えば、ある会社のIT系部門の技術部長に技術のイロハも知らない営業出身の人物が異動となったり、技術はあるものの、他者とのコミュニケーションで問題ばかり起こしている人物が昇進したりする。これは、それぞれの組織での管理職としての仕事内容を、人事や組織内できちんと議論せず、明確にしていないために起こるものだ。