カヨ子式「嗅覚教育」

 これは、その子のお母さんが教え込んだものと直感したので、まず私がにおいを嗅ぎました。

「そんなことないよ、嗅いでごらん」
「たくさんあるでしょ。黄色いのも、白いのも違ったにおいがするのよ」

 私は八重の先祖返りして、変わった冴えない色の水仙を違った場所に移植していたので、「こんな水仙もあるのよ」と言いながら手で折って、においを嗅がせました。

 でも、「わあ!」とビックリするほどくさいのです。
 確かに、水仙のにおいもしますが、腐敗臭に近い、むせかえるほどすさまじいにおいでした。

久保田 競
(Kisou Kubota)
1932年生まれ。医学博士、京都大学名誉教授。世界で最も権威がある脳の学会「米国神経科学会」で行った研究発表は日本人最多の100点以上にのぼり、現代日本において「脳、特に前頭前野の構造・機能」研究の権威。2011年、瑞宝中綬章受章。『ランニングと脳』『天才脳をつくる0歳教育』『あなたの脳が9割変わる!超「朝活」法』など著書多数。

 水仙は一輪挿しが似合う花ですが、それにしてもこんなにすさまじいにおいのある水仙があるとは思いませんでした。
 その子には、においの弱い水仙を2~3本持たせ、私はビニール袋にくさいほうを入れて帰りました。

 数日後、その子のお母さんにその水仙のにおいを嗅がせてにおい比べをし、

「同種類の花でも、こんなににおいが違うのよ!自分の経験で決めつけて教えては、豊かな感覚は育たないわよ」

 と言いながら、

「お子さんが持ち帰った水仙を花びんに挿してトイレに置いておくと、いいにおいになるわよ」

 と伝えました。

≪競博士のひと言≫
 感覚刺激に脳が敏感に反応して、認知、記憶がはかどる時期を「臨界期」と呼びます。
 臨界期には、記憶学習がはかどるのですが、臨界期でないとうまく学習できないわけではありません。
 最近では、「臨界期」よりも、「最敏感期」と言われるようになりました。
 嗅覚、視覚、聴覚には「最敏感期」があります。
どれくらいの期間かは、感覚によって違いますが、においの「最敏感期」は、まだよくわかっていません。
 においを嗅いで覚えたり、嗅いだ感情は、本人が日々の体験で会得していくものです。
 決して親が押しつけてはいけません。これが「感性教育」です。
 

久保田カヨ子(Kayoko Kubota)
1932年、大阪生まれ。
脳科学の権威である京都大学名誉教授・久保田競氏の妻で2人の息子の母。約30年前に、日本における伝統的な母子相伝の育児法を見直しながら、自身がアメリカ在住時と日本で実践してきた出産・育児経験をもとに、夫・競氏の脳科学理論に裏づけされた、“0歳から働きかける”久保田式育児法〈クボタメソッド〉を確立。この20年で3000人以上の赤ちゃんの脳を活性化させてきた。テレビなどで「脳科学おばあちゃん」として有名。累計36万部突破のシリーズ『0歳からみるみる賢くなる55の心得』『カヨ子ばあちゃん73の言葉』『カヨ子ばあちゃんの男の子の育て方』『カヨ子ばあちゃんのうちの子さえ賢ければいいんです。』『赤ちゃん教育──頭のいい子は歩くまでに決まる』『カヨ子ばあちゃんの子育て日めくり』などベスト&ロングセラー多数。ズバッとした物言いのなかに、温かく頼りがいのあるアドバイスが好評。
【脳研工房HP】
http://www.umanma.co.jp/

 

久保田 競(Kisou Kubota)
京都大学名誉教授、医学博士。世界で最も権威がある脳の学会「米国神経科学会」で行った研究発表は、日本人最多の100点以上にのぼり、現代日本において「脳、特に前頭前野の構造・機能」研究の権威。2011年、瑞宝中綬章受章。1932年、大阪生まれ。
朝4時半起きで仕事をする「朝活」を50年以上実践。ジョギングは30年以上、毎日続けている。著書に、『新版 赤ちゃんの脳を育む本』『2~3才からの脳を育む本』『天才脳をつくる0歳教育』『天才脳を育てる1歳教育』『天才脳を伸ばす2歳教育』『天才脳をきたえる3・4・5歳教育』(以上、大和書房)、『あなたの脳が9割変わる! 超「朝活」法』(ダイヤモンド社)などベスト&ロングセラー多数。