「キライ、イヤだ」は言わないで

 この嗅覚というとらえどころのない感覚は、子どもにとっても、お母さんの感じ方を素直に受けるしかないのです。

 ただ、言葉での表現は「くさい」は仕方ないとしても、「キライ、イヤだ」は言わないでください。
 たとえば、
「あまりいいにおいではないね。お母さんは、好きじゃないにおいだわ」
 のように、「キライ」と言い切らずに、「好きではない」ぐらいの表現にします。

 以前、「私、水仙はあまり好きではないの」と、水仙を部屋に飾るのをイヤがる友達がいました。

 この話を聞いたときは、何かイヤな悲しい思い出があるのかと思っていました。

 ところが、その友達に女の子が生まれ、その子には、どんなものでもにおいを嗅がせるのです。

 友達の家には、色とりどりの季節の花が、いつも飾られています。
 友達は、その子と散歩をしては野の花を摘んだり、畑の花をもらっては足して活け、まるで仏様に飾る花のようでしたが、一度も水仙が混ざっているのを見たことがありません。

 私の畑には水仙が咲いているので、その子をつれていきました。

 ところが、ドクダミの花にも近づくのに、水仙のにおいを嗅がそうとすると、その子は「くさい」と言って顔をそむけるのです。