ロシアの干ばつによる禁輸の影響で、6月には1ブッシェル当たり4ドル台で推移していた小麦の値段が徐々に上昇し、8月に入って7ドル台を付けている。
米国農務省によると、ロシアの今年の生産量は昨年より30%減になると見ている。だが、他地域の生産が順調なこと、世界の在庫量が潤沢であることを理由に、国連食糧農業機関(FAO)は、供給面への影響はさほど大きくないと見ている。日本先物情報ネットワークの平山順主任研究員も「ロシア減産分は、世界の在庫量でカバーできる」と言う。しかし本当にそうだろうか。
「潤沢」といわれている世界在庫だが、「じつは中国1国で、その3分の1を保有している」と丸紅経済研究所の柴田明夫代表は明かす。将来の不足分を見越して、積極的に蓄えているというのだ。
米国農務省によると、8月時点では、小麦の今年度の年間生産高は6億4000万トン、期末在庫率は26.3%と予想している。しかし、中国を除く在庫率は16.7%。来年度に入るとさらに落ちるとされており、この先中国を除く小麦在庫は「潤沢ではなくなるかもしれない」(柴田氏)というのだ。もちろん、中国にとってこの在庫量は、あくまでも自国のふくらむ胃袋に供給するためのものであり、輸出に回すことは期待できない。
小麦高騰は、日本の食卓へも影響を及ぼしそうだ。小麦は日本で唯一価格統制が行われている穀物だが、農林水産省は、世界的高騰を受け、今年10月からの製粉会社などに対する輸入小麦の売り渡しの平均価格を2年ぶりに1%ほど引き上げる。
穀物市場は連動しているため、トウモロコシや大豆への影響も懸念される。世界一のトウモロコシ輸入国である日本にとって、他人事ではない。
まもなくオーストラリアやアルゼンチン、ブラジルといった地域が小麦の収穫期に入る。一連の高騰を落ち着かせるか、後押しするか、秋の南半球の収穫状況が注目される。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 脇田まや)