「妥当性や有用性が認められない」
アメリカでいち早く禁止された“遺伝子検査”

「また、糖尿病などの多因子疾患においては、たとえ発症に大きく影響する遺伝子が特定されても、本人の生活習慣を無視することはできません。DTC“遺伝子検査”のように、多因子疾患に関連するゲノム情報のたった数ヵ所の変異だけを取り上げ、根拠となる論文を企業が独自に解釈し、被検者に『あなたは正常です』という結果を与えれば、『よし、だったら好きなだけ飲み食いしても大丈夫だ』という誤った思い込みを与えかねない」

「子どもの才能にしても、『音楽の才能がない』という残酷な結果を示し、一人の子どもの音楽の道を妨げる権利がいったい誰にあるのでしょうか。確かに論文は存在しているため、完全に根拠がないとは言い切れないところに恐ろしさがある。『遺伝子決定論』的な解釈に誘導するビジネスは極めて危険と言われています」(高田氏)

 いち早くDTC“遺伝子検査”キットの販売を始めていた米国では13年、FDA(食品医薬品局)の命令により、祖先検査など医療上問題とならない検査を除いて、ほぼすべてのDTC遺伝学的検査に関するサービスの販売が禁止された。15年、最大手の23アンドミー社がブルーム症候群の検査に限り認可を受けたものの、依然としてサービスの禁止措置は続いている。

「現在、ほぼ規制がないままDTC遺伝学的検査が販売されている国は、先進国ではカナダ、英国、そして日本の3ヵ国くらいです。規制している各国が根拠としている概念に、米国CDC(疾病管理センター)が提唱するACCEモデルがあります。これは『分析的妥当性』・『臨床的妥当性』・『臨床的有用性』・『倫理的法的社会的影響』の英語の頭文字から作られた略語です」(高田氏)

 『分析的妥当性』とは、何回やっても、どの機関で行っても同じ結果が出るなど、検査として確立されているか。『臨床的妥当性』は、ある検査の結果と病気との関連性が確立しているか。『臨床的有用性』とは、病気の診断がついた患者に治療などの対処法はあるか。『倫理的法的社会的影響』とは、差別につながらないか・プライバシーは守られているか等々を示している。これまでに述べたとおり、この4つの基準に照らせば、現在わが国で販売されているDTC遺伝学的検査はこれらを満たしているとはとうてい言えない代物だ。

「『太りやすい』という結果が出た人に、各企業はサプリメントや食事や運動プログラムなどをセットで販売していますが、『健康食品が特定の遺伝子変異を有する人々に有用である』という事を証明する、きちんとしたエビデンス(医学研究に基づく科学的根拠)を示したという話を聞いたことがありません。単にカロリーを制限するというだけならば、遺伝情報とは全く関係がありません」(高田氏)