男性 vs 鏡:完璧さの追求

 カイル・インセルというユーザーネームで掲示板に投稿する男性は、毎日苦痛を感じている。カイルは、見た目は普通の23歳男性。これまで何年も、孤独や自信の無さについて語った動画をYouTubeに投稿してきた。動画の中でカイルは、声を震わせながらこう語る。

「最後の髪がなくなりました。髪は男性にとって、ものすごく重要なものです。それなのに、あっという間になくなってしまった。自分はスキンヘッドが似合う顔でもない」

 カイルは、自分のような「見た目のせいで、偏見を持たれている」人たちのコミュニティを探すために、掲示板を訪れたという。しかしそこで見つけたのは、友情ではなかった。外見について議論する掲示板を見るうちに、カイルは外見にさらに執着するようになった。「いつも見た目のことばかり考えていました。一生、外見が心から離れることはないでしょう」

 カイルはハンサムな顔立ちをしている(動画でも、多くの人がそうコメントしている)。しかし彼は、ほんのわずかな薄毛が治らないようなら自殺したいと繰り返した。彼はこの件について話すのを拒んだ。

 最近、ソーシャルニュースサイトのRedditに、「Lookism.netが私を破壊した」というタイトルの長い文章が投稿された。投稿者は、Lookism.netが彼の人生に悪い影響を与えたと主張する。Lookism.netを使った後「自分の内面は、からっぽになり死んでしまった。この状態を、どう表現していいかわからない」と書いている。「わずかに残っていた自信も、なくなってしまった」という。

 Lookism.netには、体型についての様々なアドバイスが投稿されているが、その内容はとても細かい。例えばあごについては「四角で広いあごが、理想的な男性のあご。丸いあごは受け入れられるレベルだが、フォトジェニックではない。先の尖ったあごはかなり女性っぽい。性的に全く魅力的ではないとまでは言えないが、男性的な特徴を持つあごにしたほうがいいだろう」と書かれている。

Lookism.netのユーザーの投稿Lookism.netのユーザーが投稿した、「これから受けようと思っている整形手術のリスト」。あごのインプラント、花の整形、顔の脂肪吸引など、様々な部位が書かれている Photo:LOOKISM.NET

 アメリカでは、外見に執着する男性が増えている。アメリカ形成外科学会の統計によると、男性の整形手術は過去10年で急激に増加した。Incels.meの非公式の調査によると、回答した292人の男性の半分が、手術を検討したことがあった。

 ニューヨークで形成外科を開業しているダグラス・スタインブレッヒ氏によると、4年前に比べて、男性患者の数は4倍に増えた。男性患者の割合と女性患者の割合は4:1になっているという。最も人気の手術は「男性モデル」パッケージ。あご、胸筋、臀部の増強、脂肪吸引、そして腕と肩の増強が含まれている。同氏の病院では、費用は6000ドルから25000ドルだという。

 スタインブレック博士は、この"劇的な変化"を引き起こしたのはソーシャルメディアだと話す。「画面を左や右にスワイプする」世界では、"男性らしさ"や"完璧な男性"に対する考え方が大きく変わった、と同氏は考えている