何歳までこの会社で働くのか? 退職金はどうもらうのか? 定年後も会社員として働くか、独立して働くか? 年金を何歳から受け取るか? 住まいはどうするのか? 定年が見えてくるに従い、自分で決断しないといけないことが増えてきます。
会社も役所も通り一遍のことは教えてくれても、”あなた自身”がどう決断すれば一番トクになるのかまでは、教えてくれません。税や社会保険制度の仕組みは、知らない人が損をするようにできています。
定年前後に気を付けるべき「落とし穴」や、知っているとトクする「裏ワザ」を紹介したシニアマネーコンサルタント・税理士の板倉京先生の話題の著書「知らないと大損する!定年前後のお金の正解」から、一部を抜粋して紹介します。本書の裏ワザを実行するのとしないのとでは、総額1000万円以上も「手取り」が変わってくることも!

親に言い出しにくい<br />「遺産相続」の話を<br />切り出すよいタイミングって?医療費控除できるものにはグレーゾーンが多い。 Photo: Adobe Stock

相続対策をしないと、多額の相続税がかかったり家族不和の元に

 うっかりすると忘れがちですが、親からの遺産は、退職金と並んで、大きな金額になる可能性のある、人生の二大収入。大切な老後資金のひとつとなります。しかし、退職金については皆さん関心が高いのに、遺産相続については無関心な方も多いのが現実。

 せっかく親御さんが築いてくれた遺産も、何の対策もしないままでは、思わぬ多額な相続税がかかってしまったり、遺産争いのモトになってしまうこともあります。相続でもめてしまうと、家族仲が悪くなるだけでなく、本書でも紹介するように、相続税が高くなってしまうことも……。失敗のない相続を迎えるためには事前の対策が必要なのです。

 とはいえ「親と相続の話をしたいとは思っても、どう切り出していいかわからないし、気がひける」と感じている方はとても多いもの。そんな方にとって定年退職は、相続について親や親族と話し合いを持つよいきっかけになります。「退職を機に自分と親の老後のことを考えようと思うので、相続も含めて話し合いたい」と自然な感じで切り出してみてください。

 ちなみに、「うちは資産家でもないし相続なんて関係ない」と思っている人もいるかもしれませんが、相続の困りごとに遺産の額は関係ありません。実際、家庭裁判所に申し立てをした相続トラブルの3割が「遺産額1000万円以下」という統計結果も出ています。ほとんどの人にとって相続は「他人事(ひとごと)」として、放っておいていい問題ではないのです。

相続税対策、するとしないとでは、数千万円の差になることも

 親御さんはすでに高齢でしょうから、親だけで、相続対策をするのは、無理があると思います。親が築いてくれた資産を守り、できるかぎり多くを受け継げるようにするのも、子どもの責任ですから、親に資産管理や相続対策の話を切り出すことを、後ろめたく思う必要は、全くないのです。特に、相続は、金額が大きくなる可能性もあるだけに、税金の額も大きくなります。対策をしておくのとおかないのとでは、数千万円の違いが出てくることも多々あります。

 ぜひ、定年前後のこのタイミングで、相続について話し合い、万全の手を打っておいてください。またそろそろ、あなたから配偶者や子どもへの相続についても考えておきましょう。

 本書では、今すぐにできる簡単な相続税対策を多数掲載しています。ぜひご参考にしてください。