『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』では、どんなチームや企業にも存在する「組織文化」をテーマに、それを知り、変え、進化させていく方法を紹介しています。「組織文化」とは何か明確に定義できる人は少ないはずです。「一人ひとりの「感情」が組織文化になっていく」に続いて、今回はその感情を知るための「さらけ出し」について紹介します。

一人ひとりが心をさらけ出さなければ組織文化は強くなれないPhoto:AdobeStock

心理的安全性のある環境をつくれるか

 人が普段、他者に見せたいのは、自分の誇りや過去の成功体験、美徳といった強い部分です。

 一方で、弱い部分や傷つきやすい部分、最もデリケートなところは本来、人に見せたくない部分です。しかし、それをあえて他者に見せるのがさらけ出しです。

 そうした自分の弱みを他者に見せる行為には勇気が必要です。場合によっては、傷つくこともあるでしょう。本音を語ることで非難を受けることもあります。それでも弱みを見せることからしか、自分らしさを知ることはできません。そのためには、心理的安全性のある環境をつくることが何より大切なのです。

 セクシャリティのカミングアウトがわかりやすい例の一つでしょう。

 ある男性は、本当は男性のことが好きなのに言えなかったとします。以前よりは受け入れられる土壌が広がりつつあるものの、いまだに好奇の目にさらされることもあります。

 その男性は自分をさらけ出すことを怖がり、本音を隠して生きていました。そのほうが無難だし、本音を打ち明けてバカにされたり、攻撃されたり、悲しい思いをしたりすることは避けられます。

 こうして本音を隠したまま生きてきた人が、それをさらけ出して初めて自分らしさを確立する。傷つくこともあるでしょうが、自分をさらけ出して自分にウソをつかずにいるほうが生きやすくなるはずです。

 実は組織文化も人間とまったく同じ構造です。

 何か別の組織になろうとして他社と比べるのではなく、弱点や欠点も含めた組織そのものを知ること。自分たちの組織がどのようなものかを知らなければ、その組織らしさを強化することも、弱点を修正することもできません。

最下層に隠された「らしさ」

 弱みをさらけ出し、時には自分を疑うことで見えてくる「素」の自分。これを「オーセンティシティ=Authenticity(飾り気のない自分らしさ)」といいます。

 個人のオーセンティシティと組織のオーセンティシティも、フラクタル構造になっています。個人のオーセンティシティは「自分らしさ」、組織のオーセンティシティは「組織らしさ」、つまりは組織文化です。

 組織文化は、そこに属する一人ひとりの自分らしさの集積です。ただし、組織文化はピラミッドの最下層にあり、普段は意識されない何となく共有されている価値観なので非常に見えづらいものです。

 そのため組織文化を知るには、まず中にいる人のオーセンティシティを知ることからスタートするとよいでしょう。

 ところが個人の自分らしさも、組織に属していると見えづらくなります。

 人は組織の中で自分を守ろうとする生き物です。組織にとって正しいとされることを言っている間は、攻撃を受けることはありません。しかし、組織の価値観と異なる自分の主張や好き嫌いを出した瞬間に、非難を受ける可能性があります。それを避け、自分を偽って組織の価値観に合わせた振る舞いをするようになってしまうのです。

 組織の中の一人ひとりが自分らしく振る舞えていなければ、同じようにその組織も社会から攻撃を受けないよう、本来のその組織らしさを隠して偽った姿であろうとします。これはオーセンティシティとはほど遠い状況です。

 組織がオーセンティシティを大切にしたいなら、まずは中にいる一人ひとりが自分らしさを出していかなければなりません。個人の恐れの壁を壊して、本音で語り合うことが必要なのです。痛みを伴いますが、それこそが組織文化を変える最初の一歩となります。

『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』第二章より抜粋、2021年4月4日公開記事へ続きます)

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