『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』ではチームや企業の組織文化の変革方法についてまとめています。本書の中で組織文化を変えたスポーツチームとして紹介している横浜DeNAベイスターズ。“負けぐせ”のある弱小チームが、どのように組織文化を変えていったのか。チーム統括本部長の萩原龍大氏へのインタビューを3回に分けて紹介します。(聞き手、構成/新田匡央)

Photo: 横浜DeNAベイスターズ提供

――横浜DeNAベイスターズでは、早い段階から中竹竜二さんを招いて、コーチやスタッフに対するチームビルディングを実施してきました。今では選手にもその対象を広げて、徐々に組織文化が変わってきたと聞いております。なぜ、チームの改革を決意されたのでしょうか。

萩原龍大さん(以下、萩原):ベイスターズでは、2014年度入社から新卒採用を始めました。その際に当球団を受けてくれた学生が、中竹さんのもとでインターンをしていたんです。結局、彼は入社しなかったのですが、当球団でもインターンをしてくれて、その間に私の抱える課題を聞いて、中竹さんを紹介してくれました。そこで興味を持ったのが最初のきっかけです。

 早速、当時、球団の社長だった池田純と、現在の球団代表を務める三原一晃と私の3人でお会いして、中竹さんのような人にサポートに来てもらえば、チームが変わるのではないかと考えました。

萩原龍大(はぎわら・たつひろ)
慶應義塾大学理工学部在学中にDeNAにてインターンとして採用、のちに社員として入社。新卒採用を中心に人事全般を経験。2011年のベイスターズ買収に伴い横浜DeNAベイスターズに出向。2013年シーズンまでコーポレート部門の長として球団全般の仕組みづくりを担当。2014年シーズンよりチーム統括本部へ異動、現在はチーム統括本部長。

――当時、萩原さんはどんな課題意識を抱いていたのでしょうか。

萩原:これは私個人の考えですが、チームの最終的なゴールは、ファンの想像を超えて魅力的であることだと考えています。「想像を超えて魅力的である」ための構成要素はいくつもあります。試合中のスーパープレーとか、選手の生き様がカッコいいとか。

 そういったさまざまな魅力の要素がある中でも、継続的に強いチームであることというのは、もっともわかりやすい魅力の一つです。まずはそこを何とかできないかと思っていました。

 最終的にプレーをするのは選手ですから、ただただ選手を鍛えればいい、という考え方もあるとは思います。しかし私は、選手を取り囲むコーチやスタッフなど、周囲の大人の教養や人間性などの魅力次第で、選手育成の結果が大きく変わるのではないかと考えたのです。

 選手を育てる取り組みだけでなく、むしろそれよりも選手の周りにいる大人のレベルアップをはかる取り組みが最優先なのではないか、と。

 ベイスターズを含むプロ野球チームは、コーチもスタッフもほとんどがプロ野球経験者です。その元選手たちを変える取り組みには、チームを率いたことがある人が適任ではないかと思っていました。それが中竹さんだったんです。

 中竹さんはラグビーでU20の日本代表を率いていたこともあり、早稲田大学ラグビー蹴球部で監督を務めた経験もある。たとえ野球とは異なるスポーツであっても、監督経験者の言葉であれば、元選手たちにも響くと思ったのです。それが中竹さんにお願いした大きな理由です。

――元選手ではなく、元監督のほうがいい、と。

萩原:コーチやスタッフが耳を傾けるのは、ほかのスポーツでも監督を経験した人だろうというのが私の仮説です。もちろん、監督経験者だけならほかにもたくさんいるでしょうが、元監督であり、ご自身で教育や研修、育成プログラムの構築などをしている人は日本ではほとんどいません。

――チームを強くするとは、具体的にはどういうイメージなのでしょうか。

萩原:ひと言で説明するのは難しいですね。あえて言葉にすれば、選手を指導し、選手を引き上げ、「勝つための引き出し」を、チーム全体で数多く持っていたい、と思いました。

 よくコーチも言っていますが、「こうしてみてダメなら、次はこうしよう」といった工夫をするための引き出しを、それぞれのコーチが自分で抱えているノウハウだけではなく、他のコーチやスタッフも共有して、チーム全体として選手を育て、勝てる引き出しをたくさん持てるといいと思っています。