楠木建 一橋大学教授「経営の王道がある。上場企業経営者にぜひ読んでもらいたい一冊だ」と絶賛、青井浩 丸井グループ社長「頁をめくりながらしきりと頷いたり、思わず膝を打ったりしました」と激賞。経営者界隈で今、にわかに話題になっているのが『経営者・従業員・株主がみなで豊かになる 三位一体の経営』だ。
著者はアンダーセン・コンサルタント(現アクセンチュア)やコーポレート・ディレクションなど約20年にわたって経営コンサルタントを務めたのち、投資業界に転身し「みさき投資」を創業した中神康議氏。経営にも携わる「働く株主®」だからこそ語れる独自の経営理論が満載だ。特別に本書の一部を公開する。

「街の食堂」にすぎなかった外食産業において<br />ロイヤルホストはどうやって一大チェーンを築いたかPhoto: Adobe Stock

アメリカのような外食チェーンを
日本で展開するには?

 ロイヤルホストは博多発祥の、外食チェーンの先駆けです。そこに江頭匡一(えがしらきょういち)さんという創業者がいました。かねて現状を打破したいと思っていた江頭さんは、外国の外食産業の研究をしたそうです。

 すると、かの地にはデニーズのような外食チェーン、ファミリーレストラン・チェーンという一大産業があることに気づきました。自分たちがやっている飲食業がこんなにも大きく近代的なビジネスになっているのかと驚き、自分もこれをやってみたいと思ったそうです。

 しかし当時の飲食業を外食チェーンビジネスに発展させるためには、莫大な投資が必要だということも江頭さんはわかっていました。店舗は標準化したうえで規模は大きくしないといけないし、人もたくさん雇わなきゃいけない。大きなセントラルキッチンをいくつも作らなければならない……。

 先立つものはなんと言っても、大きなお金です。さて、どうやってそのお金を調達したらよいでしょう。60年代初めのロイヤル株式会社は、上場などしていません。当時もいまも、そんな会社が起債できる社債市場もありません。結局銀行から借り入れるしかないのです。でも、当時は「飲食業=水商売」という認識が一般的で、そんな事業にお金を貸してくれる銀行は存在しませんでした