外食産業に「規模の経済」が
効くようになった仕組み

 さてその後。

 ムラセは興銀本店に一生懸命掛け合って、融資が出るように取り計らったそうです。役員会でも厳しい意見が相次いだそうですが、ムラセはずいぶん熱心に説得した。その結果、当時年商12億円しかなかった会社に、6億円に上る興銀融資が出た。水商売としか考えられていなかったビジネスに、あの天下の興銀が大きな融資を実行したのです。

 そのときのことを江頭さんは、「興銀からの融資ということで、何倍もの価値がある。産業化の夢が認められ、事業家として本当に冥利に尽きる思いだった」とおっしゃっています。

 その融資を受けたのち、江頭さんがやったこと。それは、事業経済性の宿命を無視した「分散型事業を規模型事業化する」という(ある意味)暴挙です。飲食業はもともと分散型事業ですから、下手に規模を拡大すると収益率が落ちてしまうのです(事業経済性については第2回第13回を参照)。

 それなのに、江頭さんはその分散型事業の宿命に背を向けて、仕入れを集中化し、大きなセントラルキッチンを作りました。大規模な店舗群の急速な展開もしました。オペレーションも標準化・統一化し、ブランドの浸透を図りました。徹底的に大規模な共有コストをかけたのです。下手をすると、完全にリスク倒れに陥るほどのリスクテイクです

 でも、セントラルキッチンがあると、店舗では複雑な調理をしなくてよくなります。事業経済性的に言うと、単品ごとにいちいち調理という固有コストをかけなくてよくなります。そしてたくさんの食事が出れば出るほどセントラルキッチンが稼働し、共有コストが薄まって利益が出てくることになります。

 こうやって売上や利益を積み重ねていった結果、ロイヤルホストという一大チェーンができ上がったのです。