オムニチャネルといえば「ネットとリアルの融合」や「O2O(オンラインtoオフライン)」といった言葉を思い出す方も多いかもしれない。そこで考えてみたいのが、ネット販売(EC)とリアル店舗(実店舗)との関係である。前者を拡大すると後者の売上が減るためECの拡大に二の足を踏む企業も多いようだが、果たしてそうなのだろうか。今回はこれまでのまとめとして、ネットとリアルの真の融合についてひも解いてみたい。

私たちは
どうして買うのか

 そもそもわれわれは、どうして物を買うのか。「買い物」「ショッピング」という行為が何かを考えてみたい。

 ショッピングは、「目的買い」と「衝動買い」に大きく分けられる。「目的買い」はどちらかというと予め購入する商品がわかっており、またその商品がどこで販売されているか、価格帯についてもおおよそわかっている。

 インターネット検索サイトでは、目的の商品名や型番を入力すると検索結果にその商品を扱っているサイトの情報が表示される。すでによく知られているが、小売業やECサイトは、検索結果がリストの上位に位置づけられるようなSEO対策を実施したり、販促費を払ってリスティング広告を出稿したりする。

 購買者は表示されたサイトに行き、当該商品のクチコミや価格を比較検討してから購入に至る。この場合、消費者は目的の商品をある程度わかっているので、「楽しく」買い物をするというよりは、「便利」「安い」といった基準で購入していく。つまり、この時のカスタマー・エキスペリエンス(CX)は、ショッピングに「わくわく感」がないのである。

 よって、「目的買い」顧客のためにオムニチャネルをいかに構成するかが大きな課題なのだ。いかに自社のサイト(あるいは実店舗)に来訪してもらうか。要は、顧客に訪問してもらえなければ買ってもらえないし、「衝動買い」も誘発できない。

「衝動買い」はどうだろうか。「思わず買ってしまう」感覚は、「楽しさ」を醸し出すものである。